北王コンサルタント(本社・帯広)と北王農林(同・幕別)は、農業残さを使った循環型熱利用システムを構築した。小麦くずを専用機械で燃やし、熱風を厳冬期のホワイトアスパラ栽培に活用。灰は下水道由来肥料の脱臭剤や土壌改良剤として利用する。道の2022年度省エネルギー・新エネルギー促進大賞の新エネ部門で大賞に選ばれた。北王コンサルタントの石川健司社長は「サプライチェーンの構築が重要。実験にとどまらず、社会実装に意味がある」と話す。
十勝地区の農業残さは年間70万㌧以上発生し、うち43%に当たる30.9万㌧が未利用のため、処理が課題となっていた。
農業残さを燃料として使うには課題が多かった。木質系燃焼機に使用すると「クリンカ」と呼ばれる付着物が発熱を阻害。持続的・安定的な熱供給ができなかった。
実験は21年12月末から22年2月末にかけて実施。武田鉄工所(本社・帯広)の小型バイオマスバーナーを使用し、小麦くずを燃料とした。回転炉の効果で灰やクリンカを外へ放出。安定的な熱供給を実現した。
発生した熱は、ホワイトアスパラ栽培に活用。トンネルハウス内に熱風を送り込み、厳冬期でもハウス内の温度を25度に保つよう設定した。2月中旬から収穫が可能になり、帯広市内の藤丸百貨店で販売。『鉄工所×農業』のポップを掲示し、冬期間の地元野菜PRにつながった。
脱炭素にも貢献。30日で521時間燃焼し、小麦くず7971㌔を消費。灯油5203㌔の削減に成功した。
ロシアのウクライナ侵攻などの影響もあり、燃料や肥料の高騰が進む。小麦くずは、一般的な灯油や木質ペレットと比べて単価の安さが特長だ。
普及への鍵となるのは、燃料化できる残さの増加。現段階では小麦くず、もみ殻以外は問題点が多い。特にアスパラの残さは、小麦くずと比べ含水率が多く、粒度の荒さや軽さが課題だという。将来的には、ホワイトアスパラ残さを使ったシステム構築を目指している。
石川社長は「生産から販売まで成立しなければ、事業として継続できない。新エネ大賞をスタートラインと考え、よりよいシステムにしたい」と意気込んだ。