もうすぐ冬が来て、寒さが身に染みる時期です。温かいコーヒーがありがたく感じます。一口コーヒーを飲めば、寒さに固まった体がほぐれ、気分もゆったりとしてホッと一息つく感じになります。毎日のコーヒーが欠かすことのできないものになっている人は多くいます。
コンビニをのぞけば、缶、ペットボトル、豆、粉末とさまざまなコーヒーが棚にあふれています。かつて、コーヒーの飲み過ぎは良くないとされ、子供には害があるとか、がんになりやすいとか、いろいろな欠点が強調されていたように思います。果たして、現在の医学知識に照らすと、コーヒーの位置付けはどうなっているのでしょうか?
まず、コーヒーが子供に良くないという考えです。コーヒーはカフェインを含んでいます。カフェインには興奮作用があり、脳を活発化させ、爽快感を感じさせます。この興奮作用が子供には良くないということのようです。
しかし、同じくカフェインが入っているココアやチョコレートを問題なく子供たちが楽しんでいるところからみても、ほぼ偏見であることが明らかです。だいたい、子供たちはコーヒー牛乳が大好きですよね。
がんになりやすいというのも、根拠がないものでした。コーヒーが胃に対して刺激性があり、胃の運動を活発にし、胃液の分泌を促進する作用があります。この作用が胃の粘膜を傷めるという印象を持たれることになり、胃がんに良くないということになったようです。
しかし、今では、胃炎が単純に胃がんにつながるという考え方は否定されています。最新の研究によると、通常量のコーヒーの常用では、発がんと全く関連がないことが明らかになっています。さらに、肝臓がんと子宮がんに対して予防効果があることが確認されているのです。
では、コーヒーに良い効果はあるのでしょうか。まず、コーヒーの香りには精神をリラックスさせる効果が確認されています。また、カフェインの効果として、疲労回復、消化運動の活発化が指摘されています。
そのほか、悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増やす効果があり、高脂血症や動脈硬化の予防に有用と考えられます。また、高血圧症の患者さんの血管機能を改善するという報告も出ました。
つまり、一日数杯のコーヒーは全く問題がないのです。納得したところで、もう一杯コーヒーを楽しみます。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)