地域振興の鍵は〝複合化〟 道内百貨店跡地活用を考察

2022年11月11日 19時00分

帯広・藤丸、来年1月閉店 商業施設にMSなど併設

 帯広市の中心部として君臨し続けた藤丸百貨店が2023年1月31日、その歴史に幕を下ろす。市民は「本当に悲しい」「残念だ」と嘆く。しかし、閉店の主因は集客力の減退に伴う売り上げの減少。2000年以降、道内各地で店を閉じた百貨店と同じ構図だ。地元経済界からは人口減少下の商圏に「百貨店は現代に合わない」という指摘もある。今後のまちづくりが注目される中、百貨店跡地の再生は地域の特性やニーズに合わせた「複合化」がキーワードになりつつある。(帯広支社・草野健太郎、太田優駿、城和泉、函館支社・鈴木楽、経済産業部・宮崎嵩大記者)

 「むしろ、ここまでよく耐えた」―。そう話すのは、百貨店経営などに詳しい日本経済大経営学科の西村尚純教授だ。百貨店の全国的な売上高ピークは1991年度で、以降は消費者心理の変化などにより衰退の一途をたどっている。藤丸が持ちこたえた要因には「活発な十勝経済が背景にある」とみる。

 2000年以降に閉店した道内百貨店は14店舗。郊外複合施設との競争激化やインターネット通販の拡大による売り上げ減少、近年は施設老朽化も要因の一つとなっている。

再建案が練られる中で閉店の時が近づいている

 藤丸も例に漏れない。売上高は92年に最高の145億円を記録したが、21年8月期は44億7000万円まで落ち込んだ。近年は百貨店初となる自動車ショールームを入れるなど新たな試みもしたが、予期せぬコロナ禍で客足が鈍り、売り上げにつなげられなかった。

 百貨店の現状は厳しく、デベロッパー間では「単に商業施設を造れば人が集まる時代ではない」という認識が一般的。道内でも再開発に合わせたホテル、マンション、福祉施設などとの複合化が前提となっている。

 複合化はデベロッパーにとって〝腕の見せ所〟だ。ある開発担当者は「地権者に選ばれるためには、求められる機能を現地でヒアリングし、地域課題解決型の開発を提案しなければならない」と話す。25年夏に閉館し、土地・建物を一括売却する旭川市のファッションビル「オクノ」にもマンションとの複合化を提案する動きがあり、事業者間競争の激化が予想される。

 帯広の地域課題とは何か。22年度の市民アンケートでは、10、20代の約30%が商業施設の少なさを指摘した。地元金融関係者からは「若者には遊べる施設が必要。百貨店への愛着は薄いだろう」とみる。

 若い世代も形態にはこだわらない。帯広工高3年の西田陸人さんは「帯広を象徴する場所。若者が集まり、楽しく遊べる空間に再生してほしい」と話し、松本空さんは「十勝の食を生かして盛り上がる場所になってほしい。十勝中の豚丼を集めた施設でも面白い」と発想は柔軟だ。

 加えて注目すべきは、市内の高い住宅需要だ。アルファコート帯広西3・9地区開発が進めていた19階建てマンション「ザ・タワー帯広」は、住戸147戸が20年10月の竣工から1年足らずで完売した。住宅地の地価は7年連続で上昇し、影響は近隣自治体まで波及している。

 複合化成功例の一つは、函館市五稜郭地区の商業施設シエスタハコダテ。優良建築物等整備補助を活用し、物販のほか、市のコミュニティースペースと分譲マンションを一体化した施設を17年に開業した。市の調査によると、施設前の休日人流は開業後3年間で90%増加。見違えるほどのにぎわいを生み出すのに成功した。

 事業主体であるSPC函館本町開発の布村隆二社長は「商業と居住の両立をキーワードに施設を整備した。物を売るだけの時代ではもうない。市民の街に対する思いが再開発には欠かせない」と話す。

 複合化が基本である以上、地域の意向は開発の方向性を決める重要な要素。西村教授や地元経済界も「行政との連携が不可欠」と口をそろえる。事業者の動きを待っているだけでは進まない。地元の主体的な取り組みが、中心部活性化の道を開く。

 


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