温泉枯渇の恐れで観光業へ打撃も 倶知安町ひらふ

2022年11月14日 16時30分

施設稼働率上昇が予想 「地域協議会設置し源泉状況把握を」

 温泉掘削の規制開始から1年がたった倶知安町ひらふ地域で、温泉資源の枯渇化が進む可能性が高まっている。今冬の宿泊予約が好調で施設稼働率の上昇が予想されるほか、動力装置の導入が想定される箇所が20件以上あり、今後の揚水量増加が見込まれるためだ。専門家は、水位低下を巡る係争事案の発生や国際観光地としてのイメージダウンを危惧。地域で情報交換できる協議会の設置などを提言する。

 「このまま資源衰退が進めば、必要な温泉量が確保できなくなる」―。10月下旬に開かれた温泉資源保護セミナーで、道環境審議会温泉部会の高橋徹哉部会長(道立総合研究機構エネルギー・環境・地質研究所専門研究主幹)は警鐘を鳴らした。

 ニセコリゾートエリアの中心に位置するひらふ地域では、相次ぐ開発により枯渇化現象の一つである温泉井戸の水位低下を確認。2016―19年度に許可揚水量が6割増加し、水位は15m下がった。道は保護対策として、20年10月にひらふ坂付近など中心部を保護地域に指定し、新規掘削を原則禁止した。周辺に位置する旧山田地区、樺山地区の一部も準保護地域とし、21年9月から掘削と揚水量を制限している。

 道保健福祉部食品衛生課によると、20、21年は水位が下げ止まったという。ただ、豊岡大輔環境衛生係長は「新型コロナウイルス感染拡大による温泉利用施設の稼働率低下が要因」と推測。今冬はインバウンド回復で通常営業に戻ることが予想されるほか、「雪(セツ)ニセコ」や「山翠ニセコ」といった大型ホテルが本格開業するため、再び水位への影響が生じかねない。

 来年以降も枯渇の恐れは続く。今後、掘削や動力装置導入の可能性があるのは10月25日時点で23カ所に上る。

 道が出す掘削許可は2年以内に施工を完了しなければ無効になる。23カ所のうち約半数は規制開始直前に許可を受けたもので、「実際に掘削するかは分からないが、取りあえず申請した」(香港系開発事業者の日本法人)ケースもある。ただ、これら全てで湯量を上限までくみ上げることになれば許可揚水量は現状から倍増するため、道は警戒感を強めている。

 高橋部会長は、水位のさらなる低下が源泉所有者間での裁判沙汰を引き起こす可能性に懸念を示す。国内でも前例はあり、特にニセコは外国人のオーナーが少なくないためだ。さらに係争事案の発生が風評被害をもたらし、観光産業に打撃を与えかねないと危惧する。

 こうした事態の回避策として、地域で設ける勉強会や協議会での率直な意見・情報交換を提言。道内でも源泉所有者による組合や協会の設置が温泉の安定供給につながった前例があり、「源泉の状況を自分たちが把握しておくことが大切」と指摘する。

 温泉は観光客から人気の高いコンテンツの一つとされる。適正な資源管理と持続的な安定利用に向け、地域全体で衰退化防止に取り組むことが求められている。


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