旧手稲鉄北小跡地活用 北海道科学大濱谷雅弘教授に聞く

2022年11月17日 19時03分

手稲鉄北小跡、求められる開発は

 売却に向けた公募提案を控える札幌市内の旧手稲鉄北小跡地(通称てっぽくひろば)。JR手稲駅に近い約1万3000m²で、デベロッパーから注目されている。手稲区や地域のまちづくりに詳しい北海道科学大の濱谷雅弘教授に、求められる開発の在り方などを聞いた。(経済産業部・宮崎嵩大記者)

濱谷雅弘教授

―てっぽくひろばは、どのような場所か。

 何もない小学校跡地だが、区単位のイベントや防災訓練の場として活用され、地域住民や子どもたち、来訪者の重要な交流拠点。特に1998年からの二十数年間は地域住民が集うお祭り「ていね夏あかり」の会場でもあり、思い入れがある区民も多いのでは。

 ベッドタウン的な立ち位置の手稲区において、てっぽくひろばが位置するJR手稲駅周辺は駅や商業施設、病院、区役所など日常生活に直結する利便・行政サービス施設を徒歩で移動できる中心エリアでもある。

 ―考えられるプランは。

 一般的にはまちなか居住エリアとしての開発がイメージされるが、今回の公募では地域や環境への配慮が条件になっていることから「医療福祉+子育て支援」がキーワードとなるだろう。

 手稲区は少子高齢化が進んでいるものの、一部地域では子育て世帯が増加している印象。近年、北海道科学大周辺や明日風地区に新築戸建てが増え、子育て支援に関わるニーズが増している。審査項目に関わる跡地活用の区民アンケートでも「幼稚園・保育所など子育て支援施設」が最も求められている用途だった。

 医療・福祉と子育ては相性が良く、東側隣接地に小学校があるというゾーニング的な観点からも、医療・福祉系施設と子育て支援機能で構成する複合施設の建設が好ましいのでは。

 同じアンケートでは「人々が憩い、交流できるような場所」であることを求める声も多数寄せられた。ここで参考になるのは、富良野市内のフラノマルシェ2に整備された多目的交流空間「TAMARIBA(タマリーバ)」だ。

 天井の高いアトリウムで、天候や季節に左右されることなく、コンサートや各種イベント、商店街の大売り出しなどを開催し、地域住民と来訪者の交流拠点となっている。ただ、このような施設は収益性が乏しく、実現に向けては行政や地元企業、町内会などとの共働が求められるだろう。

 商業施設については、西側隣接地のJR北海道所有地再開発に加え、もともとスーパーやドラッグストアなどが十分に立地しているため新たな展開は考えにくい。

 ―プランニングに向けたポイントは。

 審査項目の100点満点中「地域貢献・地域連携」が50点を占め、地域住民視点の施設を誘導する意向が色濃い。
 ただ、最低売却価格(11億8000万円)と収益性を考えると簡単ではない。本気で勝ちに行くには、ある程度価格を積み上げなければならないが、広場など地域貢献的な公共スペースを設ければ、その面積分収益性が低下する恐れがある。

 さらに募集要項公表から公募期間までが短い。多くの関係者を巻き込んだ大規模開発は難しく、てっぽくひろばでの事業をさまざまな角度から調査・分析するプロジェクトチームを社内で結成する必要もありそうだ。

 濱谷雅弘(はまや・まさひろ)約20年間都市再開発・まちづくりのコーディネーターを担い、2005年から北海道科学大未来デザイン学部人間社会学科教授。札幌市をはじめ、道内各地のまちづくりアドバイザー、都市再開発・まちづくり関連の審査委員などを歴任する。
 旧手稲鉄北小跡地 手稲区前田2条12丁目361の24の1万2901m²で、建ぺい率60%、容積率200%の第1種住居地域。JR手稲駅が近く、西側に隣接するJR北海道所有地では賃貸マンションや商業施設の開発が進む。札幌市が8日、公募提案型売却の募集要項を公表。応募書類を12月13―26日に受け付け、23年2、3月ごろに最優秀提案者と次点提案者を決め、同4月ごろの契約手続きを予定する。

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