過去10年で初
道内不動産バブルの終わりが近づいている可能性がある。北洋銀行と北海道銀行の2023年3月期中間決算を分析したところ、2行とも「不動産・物品賃貸業」向けの融資残高が9月末時点で1年前より減っていた。両行の残高を合算すると1兆82億円で、減少幅は約300億円。微減の範囲とも言えるが、低下は過去10年で初めてだ。
融資先の業種は、融資を受ける企業のメイン業務によって分類され、不動産・物品賃貸業には不動産会社のほかリース会社なども含まれる。両行は内訳を開示していないものの、取扱単価が高くて業者数も多い不動産会社が大半を占めるとみるのが一般的だ。
2行合算の融資残高は、今から10年前に当たる12年9月末は7895億円。その後不動産価格の値上がりを背景に資金ニーズが大きくなり、融資規模も年々拡大を続けて21年9月末時点では1兆381億円まで膨らんだ。
だが住宅購入に4000万―5000万円といった高額のローンが必要になるなど相場が上がりすぎたことから、ことしの全道新設住宅着工件数は前年を下回るペースで推移。今では札幌圏の住宅・不動産業界から「去年なら建てればすぐに成約していた分譲住宅が、一部で売れ残るようになった。潮目の変化を感じる」といった声が聞こえる。
北洋銀は昨年9月末に初めて7000億円台に乗せた融資残高が、ことしは284億円減って6774億円となり、道銀は14億円減らして3308億円となった。
もっとも、事業向け全体でも北洋銀が342億円、道銀が180億円それぞれ減っている。コロナ対策で実施された緊急融資の返済が始まり、産業界全体で借入金が減り始めているとの解釈もできそうだが、例えば建設業への融資は北洋銀で92億円増、道銀で32億円増と拡大した。好況が続き、資金需要が尽きないイメージを広く持たれている不動産業への融資が頭打ちになってきたとすれば、道内経済へのインパクトは決して小さくない。(経済産業部 吉村慎司)