旧双葉幼稚園建築から1世紀

 帯広市東部の住宅街、赤いドーム屋根が象徴的な旧双葉幼稚園園舎が完成から100年を迎えた。約4900人の卒園生を輩出し、2013年の第100回卒園式をもって閉園。17年には、十勝管内の建造物として初めて国の重要文化財(重文)の指定を受けた。現在はコンサートなどイベント会場としての側面を持つ。1世紀にわたる園舎の歩みと次の一世紀に向けた取り組みに迫る。(帯広支社・太田優駿、草野健太郎記者)

旧双葉幼稚園建築から1世紀(上)「次世代へ」守り手懸命

2022年11月28日 10時00分

十勝管内建造物初の重要文化財 支える会員確保が課題

1922年築の赤いドーム屋根が特徴の園舎(NPO法人双葉の露提供)

 「十勝の原に高く立つまあるいお屋根の幼稚園。みんなもまあるく元気よく、神の宮までのびてゆけ」-園歌の一節にも登場する赤い円形のドーム屋根が特徴の園舎。1922年に帯広初の幼稚園として東4条南10丁目1に完成した。W造、2階、延べ267m²の規模で、52年の十勝沖地震を受けて55年に避難口の玄関を増設。施工は本名木材が請け負い、萩原建設工業の前身である萩原組が工事を全面的に任された。

 設計者は2代目園長の臼田梅氏とされるが、誰が図面を書いたかは不明。臼田氏が保母の資格取得のため仙台の青葉女学院に進学した際、保育雑誌で見た幼稚園施設を参考にしたか、影響を受けた教育家フリードリヒ・フレーベルの教材「恩物」をヒントに梅鉢型の園舎を考案したと推測される。

 屋内は開放的な遊戯室が中心で四方へ教室を配置。ドーム型の屋根は和組とトラスなど当時の和と洋の技術を巧みに組み合わせている。17年7月、独創的なデザインと大正期建設の幼稚園という希少さを評価され、国の重文に指定された。

 建物の原形を守りながら長寿命化改修を施してきたが、近年は雨漏りに悩む。何度かコーティングを試したものの効果はなく、バケツを置いて対応している。

 現在は重文の指定に携わった関係者や卒園生が設立したNPO法人双葉の露(佐藤俊光代表理事)が管理運営を担う。園舎の一般開放をはじめ、イベントスペースとしての貸し出しや関連グッズの販売に取り組む。ことしは100周年を記念したコンサートや子ども縁日などを主催。会員からの出資や施設維持協力金によって管理費や修繕費を賄っている。

 園舎に管理人が常駐することは難しく、ボランティアが定期的に通って様子を見守っている。改修費などに充てる収入の仕組みもない。活動を支える個人・企業会員の確保が課題だ。

 国の重文指定を受ける道内建造物は31カ所ある。明治時代の官公庁舎や住居、寺院が多くを占める。幼稚園舎は道内では双葉幼稚園のみで、全国にも4カ所しかなく、史料としての価値は高い。次の一世紀、次の世代に残すため、新たに園舎を愛してくれる人を一人でも増やそうと、守り手は懸命に活動している。


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