北海道では、10月中旬から新型コロナウイルスの感染者数は増加を続け、11月中旬に一日の感染者数の最多を記録するに至りました。この感染拡大は、全国に先行した形で現れ、北海道の一日の感染者数が、都道府県の中で一番多いという日が続きました。
この急激な感染拡大の要因は、いくつか考えられます。一つは、10月から秋が深まり、気温が下がってきたことです。この時期は、もともとかぜなど呼吸器系の感染症が多くなる時期です。10度前後の気温ではウイルスは壊れにくく、感染が広がる要因となるからです。さらに、寒さで部屋を閉め切ることが多くなり、新型コロナに対する有効な対策である換気が不完全となりやすいことも挙げられます。
そして、ワクチンの効力の低下です。北海道ではかなりの数の人が、3回目のワクチン接種を春ごろに終えました。その後の4回目は、高齢者と基礎疾患を有する人に限られていたので、かなりの数の人が3回目にとどまったまま半年が経過してしまったのです。半年もたつとワクチンで上がった抗体価は、徐々に低下し、ほとんど有効ではなくなっていると推測できるのです。
こうした状況が重なり、10月に感染拡大が始まってしまいました。そして、まだワクチン接種が十分に進んでいない10代の生徒、学生を中心に感染し、それぞれの家庭で家族に感染が広がるという形で、感染者が急速に増加していったのです。
この感染拡大は、夏の第7波と同じBA5と呼ばれる変異株によるものです。ですから、第7波の再燃ともいえるのです。しかし、遅れて感染が拡大し始めた東京などで、新たな変異株(XBBとBQ1)が増えているという報告がされました。
今後、北海道で新たな変異株が広がる危険性があります。そうすると、一段多くの感染拡大となるかもしれません。重症化率は低いままではありますが、感染者数が爆発的に増えれば、医療逼迫(ひっぱく)となることは必定です。
これまでと変わらず、マスク、手指消毒、そして換気に最大限配慮し、加えて、積極的にワクチン接種を進めなければなりません。特に若い世代へのワクチン接種の督励を親世代の責任としてお願いします。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)