資材高騰など勘案 国交省有識者会議がまとめる
国土交通省の北海道新幹線整備に関する有識者会議は、新函館北斗―札幌間の事業費について6450億円の増額が必要との試算をまとめた。当初は1兆6700億円を見込んでいたが、工事に伴う発生土処理への対応、関係法令の改正、資材価格高騰などを勘案。これに伴う地元自治体の負担増が懸念されるため、道や札幌市、沿線自治体も今後の動向に注目しており、「できる限り負担は避けたい」との声が聞かれる。8日に国交省の上原淳鉄道局長が道庁を訪れ、鈴木直道知事や秋元克広札幌市長らに詳細を説明する。
12月まで4回にわたり実施した有識者会議では、軟弱地盤の補強や資材価格高騰により上振れする可能性がある事業費を精査。事業費を抑制するため、工程見直しや施工上の工夫についても議論を重ねた。
国交省鉄道局がまとめた有識者会議の報告書によると、増額の内訳は工事に伴う発生土処理や地質不良箇所への対応などで約2700億円、着工後に生じた関係法令改正などのため約1340億円、地域住民や電気事業者ら関係者との協議対応で約670億円、資材価格高騰や消費税率の上昇で約2050億円となっている。
関係法令改正は、東日本大震災を契機に鉄道構造物の設計基準が改定され、より耐震性の高い構造物とする必要が生じるとともに、働き方改革として週休2日工事で労務費、機械経費など補正のかかり増し対応をしたことなどが背景にある。
増額の一方で、発生土の再利用や、工事で生じる湧水の処理方法を工夫することで約310億円分を縮減したが、差し引き約6450億円の増額に追い込まれた。
今後の工程の工夫として、一部トンネル工区(渡島、羊蹄、後志、札樽の一部工区)で2方向同時の掘削などを検討。工期遅れの影響を軽減したい方針だが、現時点で工期を見通すことは困難としている。
試算を受け、道や札幌市、沿線自治体も今後の動向に注視。道総合政策部交通政策局交通企画課新幹線推進班の鈴木毅主幹は「国交省に詳細な説明を求めた上で、事業費そのものと地方負担の軽減を国に訴える」と話す。札幌市まちづくり政策局の村瀬利英都市計画担当局長は「資材高騰や労働力不足の中でやむを得ない部分はある」と一定の理解を示しつつも、「地元負担が少しでも抑えられるよう国には求めたい」と財源捻出の回避を示唆する。
実際にどれくらいの負担増になるかはっきりしないが、予算には限りがあるため、関係自治体も「大幅な増額や負担に関してはしっかりと議論して検討したい」(長万部町の岸上尚生新幹線推進課長)、「物価高の影響により工事費の増額もある程度仕方がないことだが町が負担するのは避けたい」(八雲町の岩村克詔町長)、「地方負担はできるだけ最小化してほしい」(倶知安町の遠藤光範まちづくり新幹線課長)など負担増に悩む苦しい胸中を吐露している。
工期の遅れが開業時期に与える影響も指摘されている。自治体からは「今後のまちづくりに影響が出るため、どのような理由でどのくらいの期間が遅れるのかなど詳細を知りたい」「民間企業の誘致にも関わってくる。当初の予定で完成するのが一番だが、遅れることが分かっているのなら、なるべく早い段階で詳細を教えてほしい」といった声が上がっている。