寒地土研が過去40年間のシミュレーションから解明
海氷は、波浪を減衰させる効果があることから、海を浮遊する自然の防波堤と言われる。寒地土木研究所は、冬季オホーツク海の波浪に関する海氷の役割を、過去40年間の波浪シミュレーションから解明した。晩秋の波浪が強い年は海氷形成が促進され、冬季波浪の波パワーが抑制されることが分かった。海氷は同海域においても、可変的な防波堤の役割があると示された。
近年、冬季オホーツク海の海氷減少に伴い、沿岸域に来襲する波浪増大と高波被害の増加、海岸浸食、沿岸構造物の安定性低下などの多発が懸念されている。だが、海氷域に関する波浪研究は北極域に着目するものが多く、オホーツク海での研究例は非常に少ない。
今回の研究では、1980年代から現在までの40年間の波浪シミュレーションを用いて、オホーツク海の海氷と波浪の関係を調査。この結果、1―3月の期間は、海氷によって波パワーが約50%抑制されることが分かった。
また、11月の北西風が平年より増すと、同時期は波浪が強まるものの、海氷形成が促進されるため、その後の波パワーが減少することが判明した。
寒地土研では、同海の長期的な波浪変動には風だけでなく海氷の変化が大きな鍵を握ると推察。引き続き同海域の波浪について、生活圏に近い沿岸域や長期トレンドなどに着目して研究を続ける。