気象予報士・防災士の國本未華さんに聞く

2022年12月21日 18時59分

 近年、道内では悪天候による大きな自然災害が頻発化している。昨シーズンは局地的な大雪で札幌市内の交通網がまひするなど、市民生活に大きな混乱が生じた。今夏も道南をはじめ河川氾濫や土砂崩れが相次いでいる。今後、道内の気候はどう変化し、高まる災害リスクにどう対応すべきか。気象予報士・防災士の國本未華さんにポイントを聞いた。(小樽支社・塚本 遼平記者)

 ―昨冬、札幌を中心に大雪となった原因は。

 強い寒気と風の収束が考えられる。2021年12月後半から雪が多くなったが、札幌に向かって風が集まるように吹いていた。寒気がある場所に風が収束すると雪雲が発達し、局地的な大雪につながる。

 加えて、秋の気温が高かったことも要因だ。日本周辺の海面水温が高まった状態で寒気が流れ込んだことにより、雪雲の発達が生じたとみられる。

 ―今シーズンの雪はどうなりそうか。

 冬の気温低下をもたらすラニーニャ現象が続いていて、特に23年1月から寒気が流れ込みやすく降雪量が増える見込み。今秋の全国平均気温が過去最高で海面水温も高いため、風の収束が重なると昨冬のような大雪になりそうだ。

 ラニーニャ現象を発端とする偏西風の蛇行で、オホーツク海上空の低気圧がより北海道に近いところで発達する予想がある。暴風雪がオホーツク海側で多くなるほか、札幌周辺でも突発的に降雪量が増える恐れがある。

 ―世界的な気候変動の中、道内の気候はどうなるか。

 今夏は気候変動の片鱗を感じさせられた。6月後半から9月にかけ、道南を中心に繰り返し大雨となり、降水量の記録を塗り替える地域もあった。夏の高気圧が早い時期から本州上空で強く張り出し、梅雨前線を北上させたためだ。

 今後、毎年のように同様の状況が起こる恐れがある。蝦夷梅雨に見舞われる頻度が増えると考えられる。

 一方、冬は地球温暖化により平地で湿った雪が多くなっている。降雪量は減る可能性が高いが、局地的に大雪が降る危険性が低くなるわけではない。

 ―観光地としての本道にもたらすインパクトは。

 観光シーズンの一つである夏に雨が繰り返す恐れがあり、よく晴れて涼しいという一般的なイメージとのズレは出てきそうだ。

 冬は、山でパウダースノーの量が増える一方、市街地は雪不足と付き合う機会が多くなると思う。札幌の雪まつりなど、雪質管理も含めて開催の難しさが増す可能性がある。

 ―気候変動で災害リスクが増す中、注意すべきポイントは。

 道内でも5、6月の突発的な気温上昇が目立ち始めている。暑さに慣れていない時期なので、早めの対策や準備が大事になる。

 大雨についても早くから警戒感を強めた方がいいかもしれない。道内は河川の流域、規模が大きく、蝦夷梅雨のように広範囲で降ると浸水・越水する可能性が本州以南より高いからだ。過去に起きた洪水や土砂災害の場所を知っておくことも対策のしやすさにつながる。

 冬は、湿った雪や暴風雪の多発で災害が長引く恐れがある。特に雪が重くなると、落雪や倒木、着雪による停電の長期化が予想される。一過性ではなく、長いスパンを見据えた防災減災対策が必要では。

 くにもと・みか 1987年7月23日生まれ、室蘭市出身。2010年早稲田大人間科学部卒。在学中の09年に気象予報士登録し、NHKや民放で気象キャスターを担当。ウェザーマップに所属する。防災士の資格も持ち、講演会などを通して防災啓発に携わる。

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