「マッシェルコンクリート」 SDGsと脱炭素へ貢献
ホタテの貝殻をコンクリート骨材に活用する「マッシェルコンクリート」。地球環境への配慮が重要視される昨今、使用する資源の削減などにつながるとして注目されている。森町や町内の漁協などでつくる利用促進協議会の会長を務める岡嶋康輔森町長は「SDGs(持続可能な開発目標)やカーボンニュートラルなどに貢献できる」とし、道に対して公共工事での利用を促す考えだ。
生コンクリートはセメント、骨材(砂・砂利)、水、混和剤を合わせて製造するが、マッシェルコンクリートは骨材の一部にホタテの貝殻を利用する。2003年に太平洋マテリアル(本社・東京)が開発した。生コン1m³当たり100kgの貝殻を使用し、価格や強度、耐久性などは一般的な生コンと同程度とされている。
砂や砂利といった天然の骨材は国土を削って得られる有限資源のため、環境保全の観点から採取の規制が厳格化。産出量も減少し、価格は上昇傾向にある。
一方、貝殻はホタテを加工する際の副産物として無料で入手できるため、資源の節約や、採掘・輸送時に発生するCO₂の削減につながると期待されている。
森町は道内有数のホタテの産地で加工場もあるため、年間2万t以上の貝殻を産業廃棄物として処理している。これらの解決のためにもマッシェルコンクリートの利用促進は必要不可欠だ。
コロナ禍で建設投資が減少した影響などもあり、道内でのマッシェルコンクリートの使用実績は20年が約2万5900m³、21年が約2万2200m³、22年が約1万7300m³と減少傾向にある。
こうした状況を踏まえ岡嶋町長は「年間使用量を増やすためには大型工事での使用が必須。開発局や振興局に粘り強く要請する」と利用促進活動の重要性を説く。

利用促進協議会会長
岡嶋康輔森町長
その上で「森町が利用促進の先頭に立つためにも、町内の発注工事で優先利用することなども検討したい」と続ける。
現在は主に漁場整備に利用されているマッシェルコンクリート。橋や道路などにも利用可能なため、施工者などの理解を求めながら、どこまで利用範囲を拡大できるかが鍵だ。
同協議会は「貝殻から材料を生産する施設が森町にしかないため、マッシェルコンクリートの利用は道南とその周辺に限られている」と現状を説明。ゼロカーボン北海道の実現などに向け、将来的には全道への使用拡大を視野に入れていて「道内各地で生産が可能。利用したいという声があれば相談に乗りたい」としている。