宿泊地・宅地不足など課題解決へ
大樹町に縁のない若者たちが、まちづくりを提言―。このほど、北大建築都市コース建築設計学研究室の学生6人が2022年10月の現地視察を踏まえ、「町の将来像」を酒森正人町長らにプレゼンテーションした。柏林公園エリアと旧大樹駅エリアの2拠点制を唱え、人流創出を狙う。宇宙産業の注目度上昇で首都圏からの移住者も目立つが、宿泊地や宅地不足など課題は多い。学生からは、「公共施設が多すぎる」との意見があり、町の幹部は「ヒントをもらった」と好感触を示した。

模型などを使ってプレゼンした
同研究室の松島潤平准教授と学生6人は、10月に町内を巡り、町が抱える課題を洗い出した。2カ月で構想や模型を作製し、未来の大樹町を可視化した。
「出会うみち、出会うまち」をコンセプトに将来的な人口増加や公共施設数などを考慮し、宇宙ビジネスと観光、教育旅行の目的地を目指した。
建築科4年の上松篤史さんは「センターの名が付く施設が多い。機能を1カ所に集めれば空き地を使える」と話し、公共施設の集約化に可能性を見いだした。
プレゼンでは、老朽度や使用状況を踏まえ、センターと名の付く24施設のうち7施設の集約を提案。2拠点へ再編集し、空いた敷地はホテルや集合住宅などの不足機能に転用する。同研究室によると、4万4498m²の敷地が空き、延べ床は最大で10万6581m²の余裕が生まれるという。
公共施設の集約化は、まちづくりでの一つのヒントだ。宇宙産業の盛り上がりは、民間企業にとってのビジネスチャンスでもあり、集約化で空き地を作れば、目に見える受け入れのアピールにもなる。
これまでも、酒森町長は「移住者の受け皿が足りない」と課題を口にしてきた。インターステラテクノロジズ(本社・大樹、IST)では社宅を整備するなどの工夫もある。
民間企業の関心は高まりを見せる一方だ。ISTをはじめ、首都圏企業が北海道スペースポートで実験を進めている。町が取り組む企業版ふるさと納税には道内外の企業が参加し、22年には新たに19社が支援した。
2拠点のうち、柏林公園エリアは「町のプレゼン拠点」と銘打ち、入り口機能を果たす。サツドラ大樹店の北側に、道の駅や温浴施設、イベントスペースなど設置して宇宙産業のPRもする。
サツドラ大樹店の南東にある町生涯学習センターについては、図書館とカフェを融合させた施設増築を唱えた。松島准教授は「1カ所あるだけで人流創出に貢献する。増築であれば検討しやすいのでは」と分析する。
旧大樹駅エリアは、ビジネス拠点としての役割を担う。コワーキングスペースやビジネスホテルなどの設置を想定。酒森町長は「民間事業者との協力は不可欠だが、ワクワクするような提案。とても参考になった」と評価した。
学生たちは「使われていない公共施設が多すぎる」と言い切った。町の幹部には耳の痛い指摘だが、まちづくりを見つめ直すきっかけになったようだ。