官民協力し温泉街を再生

再生に向けた動きが強まる川湯温泉
弟子屈町は、川湯温泉の再生を軸に地域活性化を図る方針だ。川湯温泉で星野リゾート(本社・長野)、屈斜路湖畔で共立メンテナンス(同・東京)のリゾートホテル開発計画が持ち上がる。廃業したホテルや観光レジャー施設跡地の活用が中心。川湯温泉では、環境省や町が廃業したホテルの解体を担い、官民が力を合わせて温泉街を再生する。ホテル開発や観光施設の整備計画が進むと、周遊観光による地域経済活性化に弾みがつきそうだ。(釧路支社・坂本健次郎記者)
環境省と町は、阿寒摩周国立公園満喫プロジェクトを推進。阿寒摩周国立公園など町内に広がる自然を観光資源としてブランド化させる。併せて、川湯温泉地区マスタープランと利用拠点整備改善計画を2022年度内にも策定する。
川湯温泉2丁目の廃業した川湯プリンスホテルとホテル華の湯を環境省が解体。跡地に星野リゾートがリゾートホテルを開発するもよう。さらに町が旧川湯グランドホテル、環境省が旧御園ホテルを23年度に解体し、跡地活用法を検討する。
川湯温泉では、この他に日本気圧バルク工業(本社・静岡)による宿泊施設建設が進む。屈斜路湖畔の総合レジャー施設「いなせレジャーランド」跡では共立メンテナンスがリゾートホテル開発を計画する。
町は地域住民の憩いの場として、市街地中心部の旧営林署跡に複合施設新築を進める。温浴施設やプールなどを設ける方向。23年度に基本、実施設計を終え、24年度着工。26年1月の供用開始を目指す。硫黄山レストハウスは、休憩施設などの改修を実施する意向だ。
また特産品として町内で販売するため、ワイナリー新築とチーズ工房の整備計画が進む。屈斜路湖周辺に設置するワイナリーは23年5月に、特産品加工センターを改修するチーズ工房は同4月に着工する見通しだ。
強酸性の泉質と豊かな湧出量を誇る川湯温泉は、湯治場として繁栄。市街地近辺などで湧く温泉はよりやさしい泉質で、川湯温泉の湯治客が身体を慣らしてから帰るために利用。川湯温泉と市街地の周遊観光が形成され、発展を続けてきた過去がある。
宿泊に加えて、特産品を生産するさまざまな施設整備が計画されれば、町内を周遊する観光モデル形成や相乗効果による再度の発展が期待される。
札幌市内に拠点を置くデベロッパーの担当者は、弟子屈町をはじめとした釧路地方の観光は「カヌーなど、水辺のアクティビティ」を強みとみる。一方で、札幌など都市圏から遠いことが弱点とし「ポテンシャルを生かしつつ、距離があっても足が向くような仕組みが必要」と話す。
今後は、アドベンチャー・トラベル(AT)といった自然環境を生かしたアクティビティと一体化した旅行形態が主軸となる見方がある。阿寒摩周国立公園に広がる自然環境と固有の景観。それを望む宿泊施設、カヌーなどのアクティビティ、個性豊かな特産品などと、弟子屈町は観光振興の潜在力が計り知れない。
町や温泉街、関係者は地域の魅力発信や、まちづくりに奔走する。新たなニーズに応える観光モデルを軸としたまちづくりが推進されれば、町内や周辺地域の経済活性化が望める。
地域全体を盛り上げるにぎわいを取り戻し、さらなる魅力発信につなげれば、道東を代表する観光拠点の一つに生まれ変わる可能性がある。