深掘り

 地域経済の成長には、新たな技術シーズを生み出すだけではなく、その技術を発展させたビジネスの創出が欠かせません。〝勝ち〟にこだわる経営者らの発想やアイデアを紹介します。

深掘り 三五工務店 田中裕基社長

2023年01月30日 11時00分

田中裕基社長

Fビレッジの商業施設も

 道産木材を使用した戸建て住宅を手掛ける三五工務店(本社・札幌)は、業務領域を拡大している。住宅で培ったニッチ市場の掘り起こしを武器に木造商業施設の展開を強めているほか、年内には同社初となる木造分譲マンションの販売も計画。土地価格の高騰やウッドショックなど外部環境の悪化を要因に住宅市場に陰りが見える中、どう対応するのか田中裕基社長(40)に聞いた。

 ―業務領域を拡大しているが。

 全国的に戸建て住宅の着工棟数が減少傾向にあるため危機感があり、5年ほど前から事業の幅を広げていった。最初に始めた店舗内装の仕事は順調で、事業を担うグループ会社の売り上げが約3億円になるまで成長した。戸建ての受注が前年に比べて落ち込む中、その分をカバーできている。札幌では2030年までに再開発事業が続くため、伸びしろはあるとみている。

 22年には、会社の方針としてBtoB(企業向け)による木造商業施設の展開を打ち出した。国は、脱炭素社会の実現に向け建築物に木材の利用を促していて、この流れに乗らない手はない。

 ―北海道ボールパークFビレッジ内で商業施設「THE LODGE(ザ・ロッジ)」を請け負ったことについて。

 2年前に球団から声が掛かり、プレゼンテーションを重ねて今回の事業につながった。当社が発行しているフリーペーパー「35MAGAZINE」や飲食店を知っていて、興味を持ったようだ。今回のような規模の商業施設は初めての経験。何よりも地元工務店に設計施工で依頼が来たことに驚いている。商業棟以外にもドッグランや看板、トイレ、喫煙棟なども広く手掛け、全て道産材を使用している。

 ボールパークは北海道で代表的な施設になる。価値ある仕事に加わることができた経験を少しでも世の中にシェアしようと、住宅、木材会社などの関係者を施工現場に受け入れ、見学してもらった。道産木材がどのように使われているのか興味深く見ていて評判は良かった。今回の実績が次の仕事につながればいい。

 ―住宅部門でも新しい取り組みは考えているのか。

 札幌市中央区の旭ケ丘地区で低層階の木造分譲マンションの新事業を計画している。3階建てのメゾネットで、1階が駐車場、2階から上階が3LDKの部屋にする。住宅部分の延べ床面積は105m²程度。家の前の駐車場にはロードヒーティングを付ける。セキュリティーも完備し、マンションと戸建ての良さをそれぞれ取り入れた住宅にしたい。

 4戸あるうち3戸は分譲、1戸は賃貸にしようと思う。販売価格はまだ決めていないが、家賃は20万円くらいになるだろう。9月の完成を目指し、設計を進めている。

 ―分譲マンションを手掛けるのは初めてだが、きっかけは。

 偶然土地が手に入り、高級住宅が増えている時代の流れに沿ってやってみようとひらめいた。最初から考えていたわけではない。今回取得した土地は不動産価値が下がりにくい場所のため、ハイクラスの住宅は需要があるとみている。

 ―今後の展開を。

 住宅をただ買うというビジネスモデルが難しくなっている。若い人になるにつれて所有する感覚が遠ざかっているように感じている。短い期間だけ所有して賃貸に変えたり、あるいは事務所兼住宅にするなど住まいは多様化してきた。大手企業ができないことを地元企業が提案することで住宅市場は面白くなる。

 (聞き手・武山勝宣)

 田中裕基(たなか・ひろき)1982年生まれ、札幌市出身。日大建築学科卒。フードコンサルティング会社を経て2009年に三五工務店入社。20年に代表取締役に就任。

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