跡地に露天風呂や足湯、観光名所へ
東川町と美瑛町にまたがる天人峡温泉地区の再生が2023年度から始まる。最短2カ年で、景観を損ねている廃ホテル2施設を東川町が解体し、跡地に露天風呂か足湯を設置する構想。解体は早ければ6、7月に始める。廃虚のイメージを払拭(ふっしょく)し、風致探勝林の自然美をより際立たせた観光名所によみがえらせる。

廃虚が除却され観光名所として再生が始まる天人峡地区
天人峡温泉地区は大雪山国立公園にあるが、忠別川を挟み東川町側の「天人閣」と、美瑛町側の「天人峡グランドホテル」が廃屋化し問題になっていた。東川町が両ホテルの土地を取得し再整備する。解体費は概算で12億―13億円。町の発注で、工事は6、7月にも入札したい考えだ。
跡地整備には3億円を試算。跡地に露天風呂や足湯などの温浴設備を設け、散策できるエリア整備を目指す。将来的には民間投資も視野に入れるが、自然景観との調和を最優先にする。
再生への一歩を踏み出した天人峡温泉。東川町の松岡市郎町長は「単純な道のりではなかった」と振り返る。
観光名所の「羽衣の滝」を目当てに、08年までは日帰り・宿泊合わせて6万人を超す観光客が訪れた。しかし10年8月の大雨被害や、11年の東日本大震災、13年に発生した「羽衣の滝」に続く遊歩道の土砂崩れがあり、観光客が激減。4つあったホテルは「御やど しきしま荘」のみとなった。
既に天人峡パークホテルは解体されたが、天人閣と天人峡グランドホテルが廃虚化。景観を損ねている。21年度の観光入り込み客数も5065人と、衰退の一途をたどっている。
深刻な状況を打開するため、22年6月に東川町や美瑛町、上川総合局などの関係機関が大雪山国立公園天人峡地区魅力向上検討会を立ち上げ議論を開始。観光庁の補助金を活用できるめどが立ち、再整備が動き出した。東川町が3月に補助金申請し、採択の可否は6、7月ごろとなる見込みだ。
松岡町長は「廃ホテルの除却に成功すれば、柱状節理など雄大な自然が視界に開ける。天人峡を再生し、周辺の観光スポットと連動することで新たな人流を生み出していきたい」と展望を描いている。