将来はカザフスタンなどにも販路を
理研興業(本社・小樽)は、中央アジアのキルギス共和国に防雪柵を輸出する。政府開発援助(ODA)「ビシュケク・オシュ道路地吹雪対策計画」で元請けの岩田地崎建設(同・札幌)と資材調達契約を締結した。防雪柵の設置を主体とした事業で、延長約4.6kmの大規模工事。同国での実績を足掛かりに同じ中央アジア圏のカザフスタンやトルクメニスタンなど隣国にも防雪柵を普及させたい考えだ。
キルギスは、ソビエト連邦の解体に伴って1991年に独立した国。緯度は札幌と同じだが、厳冬期はマイナス30度まで寒くなり、山岳地域で高度3.6kmと過酷な自然環境にある。
ビシュケク・オシュ道路はキルギスの主要幹線道路で、32カ国を横断するアジアハイウェイの一部を構成する国際回廊にも定められている。冬は山頂から吹き下ろされる風が強く、地吹雪に見舞われると重大な交通事故が発生するため、現地では防雪柵の整備を求める声が根強かった。
北広島工場で製作した防雪柵の部材を苫小牧港から中国まで海上コンテナで輸送し、中国鉄道を通してキルギスまで輸出する。全部で20フィートコンテナ30個分ほどになるという。岩肌の多い山岳地域のため杭が打ちにくく、道内で一般的なブロック基礎で設置していく計画だ。
理研興業は、2016年から中央アジアの営業展開を計画し、国際協力機構(JICA)を介して現地で防雪柵の試験施工を実施したり、キルギスに駐在員を配置してきた。現在はカザフスタンの政府や高速道路維持管理会社とオンラインで打ち合わせするなど市場開拓を一層進めている。

キルギスのビシュケク・オシュ道路で17年に試験施工した理研興業の防雪柵
当面は日本からの輸出で賄うが、将来的には現地企業との合弁工場などを設けたいと考える。カザフスタンは高炉メーカーなどが工場を構えていて、中央アジア向けに防雪柵を展開する際に鋼材の供給を受けやすい。実現すれば雇用面でも現地に貢献できる。
コロナ禍の2年間は渡航制限から現地に出向いたり日本に招く機会に恵まれなかったが、代わりとしてオンラインに新たな可能性を見いだした。今後は現地要人に向けたウェブ営業に加え、自社設備を活用した風洞実験のオンライン配信などを考えている。オンライン化で事業のスピード感は一層高まるとみている。
柴尾幸弘副社長は「まずはキルギスでの防雪柵をショーウインドー代わりに各国の関係者に見てもらいたい。日本のしっかりした技術を現地に入れながらカザフスタンやトルクメニスタンなどで実績を重ね、ゆくゆくはモンゴル、中国に販路を築きたい」と話している。