砂子組(本社・奈井江)と国土技術政策総合研究所は、定置式水平ジブクレーンを活用した多能工施工の可能性に関する共同研究に乗り出した。国総研が所有するジブクレーンを2025年度まで借り受け、自社の現場で試行。クレーン運転士の免許がなくても操作できる利点を生かした効果的な取り扱い方法を追求するほか、機体の機能向上へ提言する。

人手不足な建設現場にもたらす定置式水平ジブクレーンの有用性を確かめる
水平ジブ(腕)を持ち、現場の定位置に常時設置して使うクレーンで、欧州の建設現場では標準的に使用されている。クレーンオペレーターが減る中、国総研は日本での効果を研究してきた。
砂子組は国総研が公募した土木型多能工の有用性などに関する共同研究者に採択。リープヘル社製「42K.1/J」を借り受けた。フック高12―26m、ジブ長25.5―36mで、最大定格荷重2.1t、ジブ先端吊り荷荷重は最大1.1t。道内では北海道開発局が試行していて、砂子組が3例目となる。
札幌開建の道央圏連絡道路長沼町山加山改良を皮切りに研究を開始。2203m³ある場所打ち函渠の工程でジブクレーンを取り入れた。昨年10月下旬に導入の連絡が現場へ入り、12月15日から約1カ月使用。「気軽に操作できるため、移動式クレーンを呼ばずに済み、負担が減っている」と効果を感じている。
現場代理人で入社5年目の大坂昌輝さんは、研究のためジブクレーンの操縦に必要な5㌧未満クレーンの特別教育を受講。「荷物を持って足場を上り下りすることがなくなった」と話す。現場では当初、ジブクレーンに消極的だったが、徐々に効果を理解し「これをジブで上げて」と頼まれるようになったという。人の手による運搬が減り、労災防止につながった。
ただ、玉掛けは別途教育が必要なため、大坂さんは若手社員で集まって社内へ提案。玉掛け特別教育を受ける機会を得た。監理技術者で全国初のICT土工現場を担当した野崎了さんは「若手の意見は仕事に前向きで頼もしい」と目を細める。
ジブクレーンはモーターで動くため、現場でCO₂排出を防止。山加山改良では電線を引けなかったことから発電機を使ったが、「燃料は1カ月で100Lも使っていない。ラフタークレーンなら1日で100㍑消費する」(野崎さん)と環境面への手応えもつかんだ。
モーター駆動ゆえの課題もある。静音性が高く、クレーンの動きを周囲が認識しにくい点だ。野崎さんは「天井クレーンのように音楽が鳴ればいい」と提案。また、操作時にフックが半径何mの位置にあるか分かりにくく「ジブ長に印があると良い」と考える。試行を通じ、特に延長を伴う施工で有用とみていて、「護岸ブロックの敷設で可能性を感じる」と話す。