三井海洋開発、北見工大などが設備公開
極寒な北見の気候生かし、大型氷地盤の掘削性能試験―。三井海洋開発(本社・東京)、北見工大などは広範囲鉛直掘削法による表層型メタンハイドレートの回収技術開発について研究を進めている。16日には、試験で使用した掘削性能試験設備を北見工大オホーツク地域創生研究パークで公開した。同社事業開発部プロジェクトエンジニアの岩本駿介さんは「掘削刃の形状により、地盤の削れ方が違うことが分かり、次の研究ステップに必要なデータを収集することができた」と話す。

掘削ドリルなどを擁する掘削性能試験設備
日本の排他的経済水域の海底には表層型メタンハイドレートが存在し、純国産のエネルギー資源として期待がかかる中、その回収技術開発が進められている。研究は国立研究開発法人産業技術総合研究所からの委託を受け、三井海洋開発、北見工大、日大、北海学園大、大阪大などが取り組んでいる。北見工大はオホーツク地域創生研究パークを試験場として提供している。
表層型メタンハイドレートは低温高圧下で安定的に存在する結晶固体。水深350m程度より深い海底表層堆積物の中に一定濃度以上のメタンが存在すると、メタンハイドレートが生成される。海底付近に存在するものを表層型と呼ぶ。
陸上の大気圧下では、表層型メタンハイドレートは存在することができないため、表層型メタンハイドレートの代替として、強度が同程度の大型氷地盤の開発が必要だった。
2022年10月の試験では、海底地盤を想定した模擬地盤を製作して掘削試験を実施。23年1月31日―2月13日に取り組んだ2回目の試験では、直径3m、高さ3mほどの大型タンク内に10cm程度を給水し、凍結後に給水を繰り返すことによって、高さ1・3mの大型氷地盤を4つのタンクに製作した。
この大型氷地盤を用いて、掘削性能試験装置の掘削速度を変化させたり、異なる形状の掘削刃を用いたりして掘削試験を進めた。業界トップレベルの海底掘削技術サービスを提供しているドイツのHMH社も協力した。
メタンハイドレート含有地盤の研究分野で長年の知見を持ち、研究開発に参加している北見工大の山下聡教授は「極寒の北見の地だからこそできた試験だと思う。環境にも配慮したシステム構築も必要だ。メタンハイドレートは賦存状態がさまざまなため、これからも技術開発に向けた研究を進める」と話した。