北海道開発事業費 見え始めた未来像 2023年度

 新型コロナウイルス感染症の影響長期化は世界経済を停滞させ、道内建設業にも悪影響を及ぼした。この記憶も新しいまま、1年前にウクライナ危機が勃発。世界情勢は緊迫化の一途をたどり、岸田文雄内閣は防衛費の増大にかじを切った。食料、エネルギー保障の重要性が叫ばれ、本道の役割に注目が集まる。一方で、公共事業費は他費目に圧迫される状況にある。建設業の課題である担い手確保、働き方改革に、資材価格高騰と賃上げ問題が重くのし掛かった。

 2023年度北海道開発事業費を検証しながら、本道建設業の課題を整理する。(建設・行政部 高橋秀一朗記者)

北海道開発事業費 見え始めた未来像 2023年度(上)予算確保へ関係者奔走

2023年03月06日 08時00分

最後の最後で増額に 防衛費増大を懸念

 国土交通省北海道局が22年12月に公表した23年度北海道開発予算は、国費ベースで前年度比0.1%増の5705億100万円。うち一般公共事業費に当たる北海道開発事業費は、5588億7100万円で300万円増の微増となった。

 当初ベースでは開発予算、開発事業費ともに微増ながらもプラスを果たした。ある予算編成関係者は「最終調整間際まで総額はマイナスの状態だった」と吐露。最後の最後で増額にまで持ち込んだという。

 22年度第2次補正予算のうち、国土強靱化関係も「編成作業当初から非常に厳しく、大きな減額となるという情報が出回っていた」と明かす。

 だが補正予算編成と並走して10月28日に閣議決定した政府・与党の総合経済対策案では「防災・減災、国土強靱化の推進」が具体的施策に上がった。この影響もあってか、22年度補正の北海道開発事業費は、現年補正で21年度補正と比べ約30億円減にとどまっている。

 こうした背景があり、23年度北海道開発事業費は当初と補正の合算同士の比較で0.4%減、7100億4300万円を確保。防衛費の増大、全国的な公共事業費の頭打ちなどの懸念がはびこる中、下げ幅を最小限に食い止めたと言える。

 23年度当初開発予算にいま一度目を向けると、前年度配分を上回った部門は道路環境整備、下水道、水道、国立公園等、森林整備、水産基盤整備など。

 道路と道路環境整備の合算では5億円増。通学路対策の個別補助拡充による影響が大きい。下水道は、浸水対策の個別補助拡充分によって3.9倍に。水道は高度浄水施設整備、簡易水道再編などで1.1倍となった。

 森林整備は、胆振東部地震による被災森林の整備、カーボンニュートラルに資する森林整備(間伐や主伐後の再造林、路網整備)を見込む。

 水産基盤整備は、拠点漁港整備を重点化。23年度は農山漁村地域整備交付金から個別補助化するため、伸び率が1を上回った。

 一方、過去からの災害対応が一段落したため、治山(16年台風による被災)、北海道災害復旧等工事諸費(23年度が胆振東部地震の災害復旧工事の最終年度)の各事項で減少となっている。

 足元では、北海道開発局が発注する23年度新規国庫債務負担行為の主な工事が判明した。目を引くのは豊平峡ダム改良、雨竜川ダム再生(付帯工事含む)の3カ年設定など。農業では新雨竜二期地区中島排水機場他改修ほか3件を3カ年設定としている。

 また、このほど開発局が公表した23年度予算の国交省分事業計画見通しを見ると、道路部門では国道5号倶知安余市道路共和―余市に最大114億円を投じるなどして、道内のミッシングリンク解消を急ぐ。

 直轄ダムは、雨竜川ダム再生で89億円を投じ、容量振り替え手続き、詳細設計、工事用道路などに着手。新桂沢ダム、三笠ぽんべつダムの幾春別川総合開発には33億円を措置して各本体、付け替え道路などを進める。豊平峡ダムは最大約5億円を見込み、耐震補強に着工する計画だ。

 港湾・空港・漁港部門では、釧路港西港区国際物流ターミナル整備など主要事業で防波堤や泊地整備を推進。新千歳空港の誘導路新設、耐震対策を継続する。

 こうした各事業を、前年度と同規模程度の予算を駆使して展開することになる。これらを踏まえた上での、道内建設業者に迫る目下の課題は何か。


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