今後の活動本格化に期待
122年の歴史に幕を下ろした帯広市内の藤丸百貨店。2月5日付で解雇となった従業員150人のうち7割が再就職先が未定のままだ。受け皿となるべく経済界は奔走し、1月の説明会には延べ108社が参加。しかし、閉店セールがヤマ場で業務を抜け出せない従業員も多く、人手不足下の求人側からは苦言が漏れる。未決定者7割という数字は結果的にどうなのか。双方の思惑がかみ合わなかった背景を探った。
(帯広支社・草野 健太郎記者)
この時期に説明会を開催する意味はあったのか―。1月の帯広商工会議所経営開発委の中で、委員から厳しい指摘が飛ぶ。藤丸側からは従業員へ呼び掛けがあったと言うが、参加を強制できない事情も影響した。加えて、昨年8月からの閉店セールが活況だった。藤丸にとってはうれしい誤算で、従業員が売り場を離れられない状態が発生。「最後まで藤丸に尽くしたい」と考える人も多かった。
帯広商工会議所の呼び掛けに応じた延べ108社という数は、帯広公共職業安定所の想定以上だった。中には社長自らがブースに立つ企業や、「藤丸だから」と求人を出した企業もあった。しかし業種の幅を広げすぎて、説明を聞く時間が足りない側面もあった。
慢性的な人手不足が続く十勝管内の企業にとって、未決定者7割という数字は厳しい現状を意味する。2022年12月の十勝管内月間有効求人倍率は1.39倍で、7カ月連続で前年同月を上回った。売り手市場は続くが、背景にあるのは求人側と求職者の意識のズレだ。
特に、販売職から建設業のような専門業種や他業種への転換は心理的なハードルが高い。行政は職業訓練の受講も推奨してきたが、希望者は3%程度でパソコン技能が中心。ある管内建設業者の社長は「求人を出しても来ない状況が続いている」と漏らす。
帯広公共職安の調査によると、未内定者はいずれも年齢が高めで、失業手当を最大1年間受給できることもあり、拙速には進めたくない心理的事情が働いた可能性もある。
一方で、再就職が決まった3割の従業員は、失業期間を作れない世帯主や1人暮らしがほとんどだった。個別にスカウトを受けた営業職なども一定数いるという。藤丸の臼井一義管理部長は説明会の開催について「良い成果につながった」と評価。帯広公共職安の三上元彦所長は「想定通りで、順調に決まった印象」と話す。
帯広公共職安の調査では、未定者のうち回答のあった半数以上が3カ月以内の再就職を望んでいる。人手不足下で求人が減るとは考えづらい。順調に進めば、1年後には藤丸関連の求職者ゼロを達成できる見通しだという。
人手を求める経済界とタイミングをうかがう元従業員。現時点で双方の思惑はかみ合わなかったが、これから再就職に向けた活動が本格化する見通し。結論を出すのはまだ早い。