半導体先行地域・熊本で「変化」 パーソナル・マネジメント社長 桝永健夫氏

2023年03月09日 08時00分

UIターン転職検討増加 関連企業の進出続々、マンションなど建設も

 世界的な半導体製造大手、TSMC(本社・台湾)の子会社JASMの工場建設が進む熊本県。Rapidus(ラピダス、同・東京)が北海道での半導体工場開設構想を表明したことで、先行地域として本道経済界から注目されている。Uターン・Iターン人材紹介サービス「リージョナルキャリア熊本」を通じてJASMの採用にも関わるパーソナル・マネジメント(同・熊本)の桝永健夫社長に、地域の変化を聞いた。

桝永健夫氏

 ―TSMCが熊本進出を発表したのが2021年秋。以来、半導体産業を志す人材が県外から集まっていると聞く。

 22年の登録者は前年の2倍。その半数がTSMCへの入社を希望する方だった。かなりハイスペックな方が多く、優秀な人材が熊本に集まっているという実感がある。実際これまで転職は考えていなかったが、TSMCの進出をきっかけに九州・熊本へのUIターン転職を検討し始めた人も多い。大半が熊本か九州にゆかりがあるが、全く関わりのない人も3割程度いる。

 ―若者がメインか。

 年齢層で一番多いのは30歳前後だ。自動車や鉄鋼、化学など異分野から半導体業界に挑戦したいという理系人材が目立つ。就職活動時に半導体業界が今ほど注目されていなかったこともあり、業界経験のある人が少ない印象だ。もう一つの中心層は40代後半から50歳ぐらいで、「日の丸半導体」の時代を知っているためか経験者も多い。

 ―材料、関連部品などのサプライヤーも県内に進出しているとか。

 21年の県内進出企業は59社で、うち22社が半導体関連と、半導体関連企業の進出は前年の3倍になった。TSMC進出を機に、生産拠点の新設・拡充、事業所の計画が次々に出てきている。

 ―TSMCができる菊陽町の様子は。

 菊陽町や隣接する合志市・大津町では交通インフラの整備や住宅の確保などが課題になっている。TSMCが進出するセミコンテクノパークには、ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング社や東京エレクトロン九州社などの工場が密集し、今でも渋滞が激しい。そのため新たな道路整備や公共交通機関の拡充などが議論されている。地価上昇率は工業地として日本一で、マンションやアパートの建設が相次ぐ。

 ―既存の企業にはどんな影響がありそうか。

 中小企業が採用に苦戦する懸念はある。例えば観光・サービス業界だ。最近はインバウンドや観光客が戻ってきたものの、コロナ禍の雇用調整で一度離れた人が、同じ職場に復帰してくれるかどうか。半導体業界の工場勤務の方が時給も高く、人材のシフトが起こり始めている。

 ―ここ最近の地域の変化をどう評価する。

 私は熊本に住んで25年になるが、今が最も求人が多い。働く場所として熊本を選ぶ人が増えていることは、地域経済にとってもとても良いことだ。24年4月には熊本大に「工学部半導体デバイス工学課程」が新設される。熊本県立技術短期大学校から熊本大への編入学が可能となるなど、人材育成の環境が整った。TSMC1社の進出で、地域ががらりと変わることに驚いている。

 ―熊本は元々ソニーや東京エレクトロンなどが立地する。半導体業界への人材紹介には慣れていたのか。

 そうは言えなかったが、この1年を通して業界を深く研究した。求められる人材の分析や、応募・面接に関する支援のノウハウを蓄積している。北海道を含むリージョナルキャリアグループで一定の情報共有をしながら地域に貢献したい。

 (聞き手・吉村 慎司)

 桝永健夫(ますなが・たけお)1967年大分県生まれ。大分大卒業後、九州リクルート企画に入社。2001年熊本支社長を経て、06年にリクルートに転籍。07年にパーソナル・マネジメントを設立。09年にフランチャイズに加盟して「リージョナルスタイル熊本」を始め、20年には大分でもスタートした。


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