本間純子 いつもの暮らし便

 アリエルプラン・インテリア設計室の本間純子代表によるコラム。

 本間さんは札幌を拠点に活動するインテリアコーディネーターで、カラーユニバーサルデザインに造詣の深い人物。インテリアの域にとどまらず、建物の外装や街並みなど幅広く取り上げます。(北海道建設新聞本紙3面で、毎月第2木曜日に掲載しています)

本間純子 いつもの暮らし便(30)春を待つ街路樹

2023年03月09日 15時42分

 道の両脇に高く寄せられた雪の壁。札幌お決まりの冬の風景です。積み上がった雪の高さが長い冬を意識させ、微かな雪消水に春の気配を感じます。冬と春の行きつ戻りつに、一喜一憂する季節になりました。

 雪に埋もれて、目立たなかった街路樹が、時々、自己主張する場面に行き合います。雪の山から両腕を上げて、頑張っているように見えるときは、クスリと笑えますが、除雪のときに負ったらしい傷跡を見つけるときは、思わず「痛そう…」と言葉がポロリ突いて出ます。雪の季節は、穏やかな日ばかりではなかったようです。

 秋に黄金色に輝くイチョウも、幹が迷彩柄のプラタナスも好きですが、冬に赤い小さな実をつけるナナカマドは、ひいき目でついつい見てしまいます。それは一年を通して、楽しい風景を演出してくれる木だから。

 ナナカマドは桜の花が終わる頃、白い小さな花を咲かせますが、あっという間に散ってしまいます。そして、間もなく、黄緑色の小さな小さな実をつけます。緑色の実はゆっくり大きくなり、葉が紅葉するより先に赤くなります。氷点下の気温を幾度も経験した後、ツグミ、レンジャク、ヒヨドリなどに実を提供する様子は、まるでナナカマド食堂。ツグミやレンジャクが、街路樹のナナカマドに群れているのを発見すると、車を止めて観察したくなるくらいうれしい風景です。

 街路樹のナナカマドは、葉が緑の時も赤く色付いた時も、景観の良い仕事をしていますが、雪景色の中の、赤い実の貢献度は、群を抜いています。色彩が乏しい季節の中で、自然からのプレゼントのようです。小鳥たちが届かなかった枝先に、黒っぽくなった実を見つけました。これは「雪解けまでもう少し!」のサイン。ほんのり赤みを増した枝で、春の準備が進んでいるようです。

 街路樹は、強い日差しを緩和したり良好な景観を作るほか、防音効果や温暖化対策など、さまざまな目的で植えられています。真夏の信号待ちでは、木陰に合わせて車を止めたくなりますし、美しい並木道を選んで通ったりもします。春から秋までの彼らの仕事ぶりを考えると、真冬の街路樹に多くを期待してはいけませんね。冬休みはしっかりとってもらいましょう。

 私は、少々遠回りになっても、街路樹のある道路を通りたがる傾向があります。なんとなくですが…、上手に運転しているような気分になれるのです。街路樹には、ドライバーの視線誘導(車道と歩道の境、道路の起伏、形状を把握しやすくする作用)という役目があるそうで、上手な運転は街路樹のおかげかもしれません。昨秋、街路樹が撤去され、街並みが一変。街のイメージがこんなにも違うのかと、驚いた街区がありました。インテリアには「お助けグリーン」という万能アイテムがありますが、街路樹や庭木は、景観「お助けアイテム」かもしれません。復活を望みます。

 街路樹の全容が見えるまで、そして、新緑の春までもう少しの辛抱です。


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