
川上将司社長
AIでスピーディー・廉価に
不動産関連事業者向けに家具家電を配置した物件写真を作成するRealty Bank(本社・札幌)は、AIが生成したバーチャル画像を部屋の写真にはめ込むデジタルステージングを低価格で提供している。データとマーケティングに基づく米国の広告戦略を念頭に不動産価値を最大化するためのツールとして活用。川上将司社長(31)に日本の現状や今後の展開を聞いた。
―デジタルステージング事業を始めたきっかけを。
2017年に賃貸経営管理の国際資格であるCPM(サーティファイドプロパティマネジメント)を取得してから米国の不動産業界と関わり始めた。日米の違いをもっと学びたくなり、21年4月に渡米し、このサービスを知ったとき、日本で展開したいと考え、すぐに会社設立の準備を進めた。
―米国でステージング事業が普及する背景は。
米国ではリアルとバーチャルを使い分けたロジカルな広告戦略が定着している。8000万―9000万円の高額物件は50万円投資してリアルステージングし、売り値に300万円上乗せして回収。3000万―4000万円の中低価格帯物件はコストパフォーマンスを考え、デジタルステージングというストーリーが広まっている。
―日本の現状について。
日本では、家具家電を設置した部屋の写真を見て物件検討することはほぼない。大手デベロッパーが作るモデルハウスは大資本がないと難しく、仲介会社も一つの成約を得るためにステージングしない。弊社のサービスが広まれば、多くの不動産業者が家具家電入りの部屋写真を広告に使える。生活を想像しながらの物件探しが当たり前になればユーザーの意識は変わる。
―1枚当たり4950円で提供できる理由を。
米国のIT会社と提携し、ユーザーインターフェイスが良く、依頼確認も簡単なプラットフォームを作成した。工程数の削減でスピーディーかつ廉価での提供を実現した。
今月下旬からは入居中の生活感ある写真をAIで未入居状態に加工する「家具消しサービス」を1枚3850円で始める予定だ。同時に360度写真のデジタルステージング加工を1枚9900円、発注から納品までスマホ完結できるアプリのリリースも予定する。どちらも競合他社に比べると低価格で納品スピードが格段に速いのが特長だ。
―米国の不動産業界と日本との違いは。
広告戦略が大きく違う。米国では不動産の価値を最大化するにはどうすればいいか、データとマーケティングを元に割り出して広告費と物件公開期間を決める。売買では一般的に4、5組の内覧者が来て、4―6カ月で成約者を獲得できるのが最もコストパフォーマンスが良いという考え。日本では即完売がベストと考えるが、米国では早すぎると値付けが安かったと見なされる。
賃貸経営も異なる。日本では満室経営を成功とするが、米国だと物件価値が最大化できていないと捉える。入居率92―95%で家賃を高く設定するのが最もいい管理会社とされる。
―今後の展開を。
23年度に累計2000社(3月14日時点で累計約400社)への提供が目標だ。データを活用し、デジタルマーケティングを効果的に活用した広告戦略でさらに飛躍したい。
(聞き手・及川由香)