札幌大通公園9丁目の遊具は、子どもたちが大好きなブランコや滑り台が、中央のクジラの噴水を挟み、南北に設置されています。その北側の遊具の塗り替え工事が、2019年に行われました。北海道昭和会さんから色彩計画の依頼があって、友人の佐藤裕子氏とプランを練り、秋の終わりに工事が完了しました。その後、遊具は冬休みに入りました。雪が解け、遊具も解禁になるはずでしたが、コロナ禍とあって、使用禁止テープのぐるぐる巻きは、しばらく外れませんでした。今は、子どもたちの歓声に包まれ、遊具も楽しそうです。

塗り替えをしたクジラのジャングルジム
塗り替えをしたのはブランコ、鉄棒、クジラのジャングルジム、うん梯、揺れる遊具のアヒルとミツバチなどです。現地調査のため、しばらく公園のベンチで様子を見ていたのですが、一番人気は何と言ってもブランコ。〝来年は年少さんかな?〟と思われる小さな子から高校生らしい大きな子まで、休みなくスイングしていました。
遊具の色彩計画の基本は、子どもたちが楽しく安全に遊べる色の選定と配色です。ワクワク元気に遊ぶイメージの「感じる色」、注意喚起の「伝える色」、感じる色や伝える色を際立たせる「支える色」によって構成されます。
「感じる色」は、子どもたちにおなじみの絵本や玩具から赤、黄、緑、青の4色をピックアップしました。高彩度色ですが、面積が少ない線形状であることと、南側の遊具とのバランスを考慮した4色です。
注意色の代表と言える黄色は、ブランコの動きをガードする柵に使用。〝気をつけて!〟と子どもたちに「伝える色」です。柵の横バーと出入り口の支柱の存在を強調するために、柵の中間の支柱は地面になじむ暗い茶色に塗装しました。ブランコの支柱には青や緑を使い、柵の黄色と色が重ならないよう配慮します。この支柱の暗い茶色は柵の黄色を「支える色」で、ドラマの脇役のような存在です。「伝える色」は「支える色」によって存在が際立ち、より良い仕事ができます。
クジラのジャングルジムでも「支える色」がGood job!。海をイメージする青をまとったクジラは、ピンと跳ね上がった尻尾に、補強の支柱が添えられています。かっこいいクジラの姿に支柱は無粋です。そこで支柱を暗い茶色の脇役にして、クジラの青い尻尾を引き立てます。「感じる色」の青を際立たせるための「支える色」です。
色は個人の好みや感覚、イメージ表現の手段として捉えられがちですが、私たちの心の深い部分に働きかけ、行動を促し、安全を確保する働きをしています。大通公園9丁目の遊具の色は、どこの公園でも見られる普通の色のようですが、ここには楽しく安全に遊べる工夫がいっぱいです。通りがかりの折には是非、彼らの仕事っぷりを見てやってください。ワクワク感満載で働いていますよ。