ラピダス半導体工場の新築支援 本道をデジタル拠点に
千歳市の工業団地「千歳美々ワールド」に進出し、次世代半導体工場を新築するRapidus(ラピダス、本社・東京)を道が支援する。1日付で道経済部産業振興局次世代半導体戦略室長に就任した。インフラや居住環境の整備など取り組むべきことは多いが「スピード感を持って対応する」と意気込む。国や千歳市とどのように連携し、事業を推進するのか考えを聞いた。
(建設・行政部 瀬端 のぞみ記者)
―投資規模は5兆円に上る。期待する効果は。
直接的な経済効果はもちろんだが、雇用創出に大きく期待する。ラピダスの支援に合わせ、関連産業誘致も戦略的に取り組み、サプライチェーンだけでなく道内企業にいろいろな形で関わってもらいたい。人材面でも、就職先の選択肢となって学生が道内にとどまったり、社会人であってもUIJターンで戻ってきたりすることが考えられる。
―新設した部署の役割は。反響はあるか。
私は総合政策部から、他の職員も建設部や環境生活部など全庁から集まった。道民や事業者の機運を盛り上げる情報発信が仕事。国や千歳市との調整も先頭に立って取り組みたい。
戦略室が立ち上がってから、民間企業から北海道のためにどのような関わりができるかという意見、こういうことが可能という意見が寄せられる。行政も含めて多くの問い合わせがあり関心の高さを肌で感じている。
―事業実現へ何から進めるのか。
用地や水、電気などのインフラ整備、人材確保、工事関係者や工場で働く人の居住環境と、何が優先というより全てに手をつけることになる。これが必要だとわれわれが何かを決めて進めるというより、ラピダスと密に連携してニーズを把握し、スピード感を持って対応することが基本となる。
―台湾の台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県菊陽町に半導体工場を建設している。
3月30、31日に千歳市と合同で熊本県庁や菊陽町役場、経済団体、肥後銀行を訪問した。現地で「これまで経験したことのないようなウルトラCの連続だった」と聞き、われわれも覚悟を決めた。肥後銀行はTSMCの経済効果を4兆2000億円と試算したが、最低限見積もった金額なので実際はこれ以上の効果を見込んでいるという。ラピダスの投資額はもっと大きいので、それ以上の効果を期待している。
限られた時間でプロジェクトに取り組まなければならないことが、熊本県と北海道の共通点だった。インフラ関係の許認可など、あらゆる場面でスピード感が必要だと学んだほか、各関係機関の連携が重要だと認識した。熊本県もラピダスに関心を持っている。良い関係を築けたので引き続き情報交換し、人づくりの面など参考にしたい。
―ラピダスの進出を機に目指す北海道の将来像は。
半導体に限らずものづくりやデジタル産業を推進してきたが、これらをさらに飛躍させ、世界中から研究者や技術者が北海道に集まるデジタル人材の拠点を目指す。国の経済安全保障に貢献しながら、食や観光とは違った北海道の新たな価値を創出する考えだ。
戦略室だけでなく、3月に知事がトップの北海道次世代半導体産業立地推進本部が立ち上がった。また、国や千歳市などが加わる北海道次世代半導体産業立地推進連携会議、経済団体が入る北海道企業誘致推進会議という体制で支援する。投資規模がこれまでの道内の民間投資では最大というのもあり、これらは異例のサポート体制だが、プロジェクトの意義を共有し、国、千歳市、ラピダス、経済団体や高等教育機関とオール北海道でしっかり前に進めたい。