室蘭工大名誉教授 田村亨氏に聞く

2023年04月21日 08時00分

民間企業が整備・運営を 石狩市の都市型ロープウエー

 本道で深刻さを増す、地方部での生産年齢人口減。本道の魅力である食と観光の舞台「生産空間」の維持・発展を阻む。道内市町村はそれぞれの存続を懸け、新たな街づくりを推進している。そんな中、石狩市が国土交通省の「先導的官民連携支援事業」に選出された。石狩湾新港と中心市街地を、都市型ロープウエーで結ぶための調査を進める。こうした事例を踏まえ、これからの街づくりの方向性を、田村亨室蘭工大名誉教授に聞いた。(建設・行政部 高橋秀一朗記者)

田村亨室蘭工大名誉教授

 ―石狩市が都市型ロープウエー整備に関する調査を始める。

 市の提案書内に記述された「民設民営」がキーワードだ。ロープウエーの整備と運営を、市ではなく民間企業が展開する点が重要となる。

 市が2022年2月にまとめた「再エネの地産地活・脱炭素で地域をリデザイン」によると、データセンターなどの企業施設やサンビレッジいしかりがある石狩湾新港地域内REゾーン(電力需要の100%を再エネで供給することを目指す区域)と、市役所をはじめとした公共施設が集積する地域の間をロープウエーで結ぶ提案をしている。

 この構想は、シュタットベルケの考え方に基づいているように思う。シュタットベルケはドイツで100年の歴史があり、日本語にすると「都市公社」。複数の事業を展開し、そのうちの赤字事業(公共交通など)にもうけを充てる仕組みだ。

 シュタットベルケは5年前ほどから日本ではやり始めた。本道では下川町が代表例。山梨県は水力発電を持っていて、この電力でもうけて、県内のバス路線などの赤字部分に補填している。

 シュタットベルケの考えに基づけば、石狩市のロープウエーは、仮に人がほとんど乗らなくても運営できる。お金は他事業でもうけてあるからだ。

 ―今後考え得る街づくりの展開は。

 「再エネの地産地活・脱炭素で地域をリデザイン」の中で、公共交通と送電網のセクターカップリングによる地域課題の同時解決が示されている。ここでロープウエーが提案されている。

 ここでの地域課題とは、先に述べた石狩湾新港地域内と、市役所など公共施設の集積地域を結ぶ公共交通手段を確保することが1点。もう1点は、地域の再エネを促進するためには送電網の増強・新設が必要だが、既存道路への埋設などによる整備には埋設空間上の限界があるという点だ。

 道路上部空間を活用したロープウエーの新設によって、地域住民の移動手段の確保と、送電網整備の課題を解決できる。将来的には、水素供給インフラを共架することも検討する、としている。

田村亨(たむら・とおる)1955年札幌市生まれ。北海道開発技術センター会長、室蘭工大名誉教授。83年北大大学院工学研究科修了後、室蘭工大教授や北大大学院教授を経て、北海商科大教授に着任。2023年3月に退職した。

(北海道建設新聞2023年4月20日付1面より抜粋、WEB用に再構成して掲載しています。)


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