確たる事業主体に モンゴル人経営の建設会社UNILEAD

2023年05月05日 08時00分

土木、建築から太陽光発電施設の設計施工まで幅広く

自社オフィスに立つテルグーン社長

 札幌市清田区にあるUNILEAD(ユニリード)は全国でも珍しい、モンゴル人経営の建設会社だ。創業者はウランバートル出身の32歳男性。現場の中核となる社員は20―30代のモンゴル人で、全員が施工管理など何らかの資格を持つ。外国人は長い間、足りない労働力を埋めるための補助的な存在と見られてきたが、同社は本道建設業の確たる事業主体として受注を伸ばそうとしている。

 社員17人中11人がモンゴル人で、ほぼ全員が流ちょうな日本語を話す。2018年に設立し、21年秋に道知事から建設業許可を受けた。社長の国籍は許可要件でないため正確な統計はないが、国土交通省国際市場課の担当者は「モンゴル人経営の建設業者は非常に珍しいのではないか」と話す。

 エルデネバートル・テルグーン社長は1990年6月生まれだ。小学校時代、獣医の父に帯同して帯広で2年暮らし、日本語を習得した。母国の高校を出て信州大工学部に入学。卒業の13年春、高校の先輩が務めていた新冠町のケイセイマサキ建設に入社した。

 マサキは当時モンゴルに拠点を構え、砂漠地帯での道路敷設などに関わっていた。テルグーン氏はこの一員となり母国で活躍したものの、「現地では手に入る資材も労働者の技術も日本の水準に及ばず、質の高い道路にならなかった。自分一人だけ技術を高めても、仲間と一緒に全体のレベルを上げなければ無意味と痛感した」。

 その後マサキはモンゴルから手を引く。テルグーン氏は北海道に戻り、マサキの技術者として順調に実績を積んでいた。だが数年が過ぎたころ、大学時代に決めた起業への思いが強くなる。技術レベルの高い日本で建設業を営んでみたい。かねて周囲にも話していた夢で、正木省司社長(現会長)と話し合った上、18年11月に自分の会社を登記。翌年の夏に独立した。

 初仕事は、日高管内の太陽光発電設備にフェンスを建てることだった。結婚間もない妻と、アルバイト2人の4人で数日かけて施工。単価は数十万円だったという。

 小さな受注に対応し続けるうち、少しずつ仲間や取引先が増えてきた。工事部のエルデネスレン・エンフメンデ主任は、帯広の小学生時代一緒にいたモンゴル人仲間だ。母国の大学を出て埼玉のゼネコンで働いていたが移ってきた。

 工事部のガンボルド・ビルグーン課長、ビルグーテイ・ナサンブヤン係長はマサキに勤めていた後輩だ。2人が来日したのは14年、17年。どちらも当初は日本語を話せなかったが、猛勉強で今では資格試験に合格するほど上達した。社長を含む4人を合わせると一級土木施工管理技士補、二級建築施工管理技士、第二種電気工事士など7種類の資格を保有していることになる。

 若いモンゴル人の姿を見て、日本人のベテラン技術者も複数加わってくれた。会社は今、土木、建築工事から太陽光発電施設の設計施工まで幅広く手掛ける。売上高は第1期から毎年増え、22年10月期は約1億2000万円。23年10月期は2億円を超す見込みという。

 日本の人口が減る今後、地域経済を支える人々の間で、国籍の垣根は低くなる。ユニリードはその象徴だ。


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