義務化まで残り2年 納入遅れや改築の必要性が課題
病院・診療所のスプリンクラー設置義務化まで2年ほどに迫っている中、十勝管内では5町村の公立医療機関が未整備のままだ。全国的な設備の納入遅れが懸念され、設置への見通しが立てづらい状況。中には現施設での設置が難しいため、改築を決断した町もある。管内の現状をまとめた。
(帯広支社・太田優駿、草野健太郎、城和泉記者)
2013年に福岡市内の診療所(19床)で火災が発生。防火扉が作動せず、消防への通報が遅れたため全焼し、患者ら10人が死亡、5人が負傷した。
この火災を機に消防法施行令が改正された。16年から、病床を置く病院・診療所は延べ床面積にかかわらずスプリンクラー設置が義務化された。経過措置は25年6月末まで。
十勝管内には病床を構える公立病院が12町村にあり、うち7町は設置済みだ。一方で、未整備の施設は対応に追われている。
新得町にあるサホロクリニック(1990年完成、19床)は、内科など4つの科目を持つ。公設民営で医療法人前田クリニックが運営している。
スプリンクラーの設置には、水回りなどの大規模改修が伴う。老朽化も進んでいるため、町は現施設の活用が難しいと判断。整備手法を改修から改築に切り替え、24年3月の着工を目指す。植村土建などの共同体が設計施工を担う。
保健福祉課は「本年度あたりから全国的に設置ラッシュとなり、設備の供給不足や納期遅れが多発しそう。公設民営なので、対応をするにも町の一存で決められない」と苦慮する。
更別村でも村立診療所(04年完成、19床)での設置に向けて動いているが、備品は思うように入手できない。建設水道課は「設計者から納期が半年から1年かかると聞いている。予算の繰り越しも頭に入れなくては」と話す。
浦幌町の浦幌診療所(98年完成、19床)は23年度、スプリンクラー設置の実施設計に取り組む。室内に水槽を設置する空間がないため、施設外に出すことも検討。施設課は「北海道胆振東部地震後に非常用発電機を入れるなど、何かあるたびに整備してきた建物。簡単に改築というわけにもいかない」と漏らす。
鹿追町と陸別町も未設置だ。こうした動きは十勝にとどまらない。管外では上富良野町や滝上町、新冠町が病院・診療所改築の一因に挙げ、整備に動いている。
事件や事故があるたびに、法改正などを通じて患者の命を守るための施設整備を施す医療機関。近年はコロナ関連で手を加えたばかりの所もある。整備手法の検討は悩ましいが、早期に着手しないと設備が手に入らない可能性も高い。早急な対応が求められている。