深掘り

 地域経済の成長には、新たな技術シーズを生み出すだけではなく、その技術を発展させたビジネスの創出が欠かせません。〝勝ち〟にこだわる経営者らの発想やアイデアを紹介します。

深掘り YUK FACTORY 山内明光社長

2023年05月07日 08時00分

山内明光社長

頭数抑制へ 製品化まで一貫

 エゾシカ由来の化粧品や革製品を開発・販売するYUK FACTORY(ユク・ファクトリー、本社・札幌)が、道内でシカ牧場の開設を構想している。繁殖や調達から製品化までできる拠点をつくることで、大きな問題となっている野生のシカの頭数抑制にも役立つという。山内明光社長(60)に構想の詳細を聞いた。

 ―会社設立は1年前だが、どのようにシカ製品の事業を始めたのか。

 発端は2019年にさかのぼる。経営しているイベント会社で、オートバイの催しを阿寒でやらせてもらったとき、エゾシカ革のライダースジャケット制作に関わったのがきっかけだった。

 エゾシカは肉がジビエ料理に使われるのは有名だが、調べると化粧品原料としても評価が高い。知り合った加工業者がシカの油を大量に持っていたことから、イベント会社の新規事業で化粧品販売を始めた。曲折を経て、シカの生産・加工・販売を総合的に展開しようと昨年4月にYUK FACTORYを設立した。

 ―本道では野生のエゾシカが増え、農業被害や交通への影響が問題視されているが。

 牧場をつくる大きな目的の一つがまさにその対策だ。行政の推計でも道内に約65万頭のシカがいて、実際はその3倍ともいわれる。姿がかわいらしいためか多くの人は害獣と見なさないが、被害は年々深刻になっている。一方でハンターは減り、駆除が追いつかない。

 ―ハンターはどうして増えないのか。

 高齢化に加えて、収入の問題が大きい。1体撃って行政の報奨金を受け取り、加工業者に持ち込んでも収入は合計2万円に満たない。そして最近は物価高騰で銃弾1発が約2000円かかり、仕事として成立しない。さらに言えば仕留めて30分以内の血抜き、2時間以内の持ち込みといった厳しいルールがあり、駆除後の個体は9割以上放置されるのが実情だ。

 ―牧場は対策としてどう機能するのか。

 われわれの計画では、山林を柵で囲んでシカを放牧し、解体・加工施設を併設して製品化、販売まで一貫して手掛ける。ここを拠点にシカを6次産業化して、個体の持ち込みがあれば従来より高く買い取る。職業ハンターが増える状況をつくりたい。

 ―なぜ高く買えるのか。

 これまで低額だったのは、活用先がジビエなどに限られていたからだ。われわれは化粧品、衣類にも使い、今後は北海道科学大との連携でサプリメント、ペットフードなどでも製品化を計画している。今の一般的な買い取り相場は1体5000円程度だが、個体から生まれる付加価値を最大にできれば3万円まで引き上げられる試算だ。

 牧場はエゾシカのブランド化にも役立つ。餌、血抜き、加工方法などがしっかり管理された製品を安定供給できる。道産ブランドとして世界に発信できれば、例えばシカ肉がイスラム教徒にも食べてもらえる点を考えても、市場は非常に大きくなる。

 ―社会起業的なビジネスですぐに利益を出すのは難しい。事業資金の基盤はあるのか。

 道路土木資材商社、日成産業の浪岡明彦オーナーからの理解・支援を受け、同社を中心とする明成香(あせか)グループの一社として設立した。今は道内で牧場3カ所を開くことを目標に、構想に賛同してくれる複数の自治体・企業と協議を続けている。順調なケースばかりではないが、年内には胆振か日高管内で、1号施設の決定を発表できそうだ。

 (聞き手・吉村慎司)

 山内明光(やまうち・あきみつ)1963年4月札幌生まれ。87年北海学園大卒、札幌市役所入庁。札幌市芸術文化財団でサッポロ・シティ・ジャズ立ち上げなどに関わる。2016年に独立しイベント会社「オワゾブルー」設立。

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