トクヤマとチヨダウーテの合弁会社「トクヤマ・チヨダジプサム」
建物の壁や天井に使われる石膏ボードのリサイクルに向けた動きが広がっている。最終処分場の残余容量が少なくなっているほか、循環型社会に向けた意識の高まりが背景。中でもトクヤマとチヨダウーテの合弁会社は、室蘭市内のリサイクル工場を今夏に本格稼働させる計画で、解体系の廃石膏ボードを中心に道内リサイクル率の底上げに寄与するか注目される。
石膏ボードは、石膏両面を原紙で覆った建築用の内装材料。防火性や遮音性、寸法安定性などの特長を持つ。建築物の高層化などを背景に1980年代から需要が増え、更新期の今は解体工事の際に産業廃棄物として多く排出される。
これまで廃石膏ボードは最終処分場で埋め立てられるのが一般的だった。しかし、1999年に福岡県の廃棄物処分場で硫化水素ガスを吸い込む死亡事故が発生し、滋賀県でも高濃度硫化水素の発生事故が起こって社会問題化した。
これらを受け、国土交通省はシートを張るなどして汚水が外に漏れない構造の「管理型処分場」を法制度で厳格化。各地で整備が進んだが、受け入れる産業廃棄物は石膏ボードだけではないため、施設の残余容量の問題からリサイクル化が叫ばれるようになった。
石膏ボード工業会によると、廃石膏ボードの排出量は2023年に150万tを超え、47年には300万tを超す見込みだという。国立環境研究所によると、16年度の廃石膏ボード排出量は119万tで、うち72%の85万tが中間処理されて土壌改良材などにリサイクルされたが、34万tは管理型処分場に埋め立てられた。
リサイクルされる廃石膏ボードの多くは新築時に出る端材で、建物の解体時に出る物は全体の2%ほどといわれる。地域格差もあり、中間処理業者の少ない北海道はリサイクル率自体が全国より低いといわれる。
道内は、13年に札幌建設業協会と北清企業(本社・札幌)が石膏ボード端材のリサイクル処理運動を推進した。リサイクルファクトリー(同)も千歳事業所で石膏ボード端材の受け入れ処理をハウスメーカー向けに展開する。
解体系の廃石膏ボードのリサイクルは、公清企業(本社・札幌)がパイオニアだ。18年に札幌市東区中沼町のリサイクル団地内に工場を新設し、土壌改良材や製紙原料などに再利用するため稼働する。空知環境総合(同・岩見沢)もリサイクル施設の建設を岩見沢市内に計画する。
トクヤマとチヨダウーテの合弁会社トクヤマ・チヨダジプサム(本社・三重県川越町)は、室蘭に国内3カ所目の工場を建設中。道内各地の中間処理業者から廃石膏ボードを受け入れ、破砕・焼成した後に結晶化させることで、再生石膏を製造・販売する。いわゆる〝ボードtoボード〟と呼ばれる石膏ボードの100%循環生産の取り組みだ。
4月27日に札幌市内で開かれた建設廃棄物協同組合北海道支部の研修会で、公清企業の大嶋武営業開発部長は「廃石膏ボードのほか、建設系混合廃棄物の組成分析やふるい下残さ適正処理の研究など、建設廃棄物に関わる事業者が連携して取り組むことが重要だ」と話した。