大手ゼネコン4社の23年3月期決算 コロナ禍和らぎ3社で増益

2023年05月18日 08時00分

設備投資ニーズ堅調に推移 24年3月期はコスト上昇で減益予想

 大手ゼネコン4社の2023年3月期決算が出そろった。コロナ禍の影響が和らいで設備投資ニーズが堅調に推移し、売上高は全社が前期を上回った。収益では、札幌の複合ビル工事施工不良で240億円の損失を出した大成建設を除いて3社が増益。大林組は工事損失による前期の大幅減益から一定の回復を見せた。一方、24年3月期については資機材などのコスト上昇傾向から減益見通しが目立つ。

 4社の連結売上高を合算すると7兆9519億円で、前期から13.1%増えた。営業利益は6.8%増の3267億円、純利益は8.9%増の2856億円。収益力は前期と比べれば回復しているものの、世界的なインフレを背景に原材料、資機材の価格高騰が続き、21年3月期の水準には戻っていない。

 収入・利益で頭一つ抜けているのが鹿島だ。売上高は3100億円上積みして過去最高、純利益は79億円増で18年3月期に次ぐ水準に戻した。単体の受注高は4社中最大の1兆5357億円で、特に官庁土木が72.9%増、民間建築が26.4%増と伸長した。

 単体受注高で鹿島に続いたのが清水建設だが、好調だった前期の反動で1.2%減の1兆5158億円。国内は民間土木が2桁減と振るわなかった。半面、単体の完工高では手持ち工事が順調で22.7%増の1兆4281億円とトップ。ほかは鹿島16.4%増、大成建設が10.5%増、大林組が0.2%減だった。

 インフレで工事原価が上がる中、各社を苦しめたのは採算性だ。完成工事総利益率は最高の鹿島でも10.6%で前期比1.1ポイント悪化し、大成建設は3.9ポイント下げて7.4%だった。大林組は4ポイント改善したものの9.9%、清水建設は前年並みの5.2%と低水準にとどまる。特に厳しいのは資材のボリュームが大きい建築事業。大林組の場合は土木の総利益率15.3%に対して建築は8.3%で、ほか3社も建築は10%未満だった。

 繰越高は4社単体合計で3.6%増えて9兆5億円となった。最も多かったのは大成建設の2兆5842億円で6%増だった。大林組が2位で、続く清水建設は前年を割ったが2兆円台を保った。

 24年3月期については、各社が底堅い建設需要を見越す一方、資機材・エネルギー価格の高止まりに警戒感を強める。連結売上高は全社が増加を見込むが、大成建設は純利益を4.5%減、鹿島は6.1%減と予想。大林組は29.2%の最終減益を見通している。清水建設は最終利益1.9%増を予想するが、経常利益は4.5%減とした。

 単体受注高は鹿島を除き減少。完工高は鹿島、清水建設で減少を見通す。全社が、完成工事総利益率に大きな改善はないとしている。

 北海道建設新聞2023年5月17日付2面には、各社の連結決算と単体の内訳をまとめた表が掲載されています。閲覧は新聞本紙をご覧ください。

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