本道で水素事業展開へ データセンターなど需要に期待
脱炭素を巡って電力・エネルギーの重要性が日増しに高まり、北海道電力(本社・札幌)は水素の利活用やデータセンター(DC)との連携、新たな電力ビジネスなどで事業の多様化を図っている。同社の役割拡大が見込まれる中、一連の新規事業を所管する皆川和志常務執行役員総合エネルギー事業部長に今後の展望を聞いた。(建設・行政部 高田陸記者)
―水素利活用に向けた北電の役割は。
本道は再生可能エネルギーが豊富だが、得られる電力を全て使う需要はない。水素に置き換えて蓄えれば再エネを地産地消できる。
当社を含む道内9社は2021年、水素事業プラットフォームを設立した。道内外の企業でプロジェクトを組成し、バリューチェーン構築を目指している。
―事業性の検証にも取り組んでいる。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から道内外の他社と共同で受託し、石狩湾新港の洋上風力発電所から発生する余剰電力を活用した水素製造や、新千歳空港での水素利活用を調査した。
ことし2件とも調査完了した。事業性は十分にあるが、サプライチェーンが未整備の中では輸送や製造のコスト面が大きな課題だ。技術的にはコストほどのハードルはないとみる。
―現在の取り組みは。
22年10月からENEOSなどと共同で、大規模なグリーン水素サプライチェーン構築の可能性を調査している。苫小牧地域で出力100MW級の水電解装置を導入した場合を想定し、事業モデルなど検討中だ。
当社に、水素と二酸化炭素の合成燃料などを視野に協業の声掛けをくれる企業もある。
30年までに小規模でも何らかの形で事業化し、40―50年の水素社会を目指したい。
―道内はデータセンター集積の機運も高まる。
フラワーコミュニケーションズ(本社・東京)を代表とする合同会社が石狩市内で26年度のDC開業を計画し、当社は再エネ電力を供給する。アグリゲーション(分散電源の統合制御)を視野に太陽光や風力など自社、他社の再エネを使いたい。
地産の再エネ電力という本道の強みを生かし、電力需要の誘致に力を入れる。ラピダス(本社・東京)の半導体工場もトータルで数十万kW規模の電力需要が見込まれ、当社も専任チームをつくり情報収集を始めたところだ。
―PPA(電力販売契約)やアグリゲーションなど新たな電力ビジネスにはどう向き合うか。
需要者側ではここ数年、環境価値の付加ではなく、実際の再エネ電力を使う意欲が強まっている。当社でも近年、イオン北海道の店舗で太陽光のオンサイトPPAを提供し始めた。
アグリゲーションでは本年度、道内の余剰再エネ電力を活用する札幌市の事業を受託した。PPAも含めて顧客要望に応じて展開し、再エネの有効活用につなげる。
―エスコンフィールドHOKKAIDOではエネルギー供給全般を手掛ける。
ヒートポンプやボイラなど当社所有の設備を置き、電気・ガス・熱を一括提供している。保守運用や需給管理まで担い、サービス料金を受け取るスキームだ。このようなエネルギーサービスプロバイダー(ESP)事業は以前から手掛けていたが、本球場のような大規模施設での提供は初だ。引き続きニーズに応じて提案していきたい。