行政書士池田玲菜の見た世界

 アンパサンド行政書士事務所の池田玲菜代表が、行政書士の視点から連載するコラム。(北海道建設新聞本紙3面で、毎月第1木曜日に掲載しています)

行政書士池田玲菜の見た世界(30)職業的背景で変わる視点

2023年05月19日 09時00分

経営の判断、バランス良く

 新プロジェクトを開始するとします。

 経理部長の立場の方は、プロジェクトの成功を金銭面で評価するでしょう。売り上げが想定通りに上がるのか、想定通りの経費で賄えるのかを主に検討し、利益が減少することとなっても耐えられるのかという視点を重視するでしょう。

 一方、営業部長の立場の方は、売り上げを上げるために何ができるのか、どのように売り上げを増加させようかという視点から検討することが多いと思います。

 技術開発部長の立場の方は、技術力の向上と、高度な技術を活用した製品開発を検討したいでしょう。

 職業的背景が違えば、一つの物事に対して捉える視点は変わります。

 経理畑出身の方が社長を務めていらっしゃった会社が、営業畑出身の方へと社長を交代しました。それまでは、どのようなプロジェクトを開始するにも、予算を確実に立て、綿密に計画し、石橋をたたいて渡るようにしていました。社長交代後は、たががゆるんだのか、多くのプロジェクトが適切な収支計画も立てられないままに実行されました。特に経理部門の担当者は大変不安な思いをしていたようです。会社の経営が行き詰まることはありませんでしたが、大株主であった前社長の判断で、社長は交代されました。

 今年は、私が卒業した高校の同窓会の幹事期にあたる年です。数十年ぶりに高校の同期が集まり、幅広い職業的背景を有した人たちでイベントを企画、運営しています。

 職業ごとの考え方の癖やそれまでに培った価値観により、衝突が生じることも多くあります。リスク減少に主眼を置くメンバー、みんなが仲良くやることを中心に考えるメンバー、段取り重視のメンバー。

 それと同時にそれぞれの役割があります。まとめる役割、企画する役割、実行する役割。

 この数カ月の幹事期としての運営を通して、プロジェクトを円滑に進めるためには、役割と考え方の癖が合致している方がよいと感じるようになりました。そして、それは大抵、実際の職業と密接につながっているようです。

 学校を卒業して、アルバイトの経験もないままに社長となる人は少なく、たいていは何らかの職業経験を経ているものです。そして、職業経験に限らず、慎重派だったり、段取り上手だったりと個性と言えるような考え方の癖があります。

 経営には、慎重かつ大胆な判断が必要となることが多いです。それぞれの判断ごとに、自分の職業的背景から想定される考え方の癖を把握し、違う背景を持って入ればどのように考えるであろうかと検討する。そのような問い掛けを日常的に繰り返すことで、バランスのよい判断ができるようになると思います。


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