道内空港で人手足りず 地上業務担うグラハン確保が課題

2023年06月01日 08時00分

国際線再開できないケースも

 グランドハンドリング(グラハン)と呼ばれる地上支援業務の人手不足が全国の空港で課題となる中、苦境は道内にも及んでいる。国内線に大きな影響はない一方、新型コロナウイルス水際対策の緩和で需要回復が進む国際線では再開を受け入れられないケースも出ている。「空の玄関」の目詰まりは道内経済にも影を落としかねない。一部空港は官民連携で対策に動いている。(建設・行政部 高田陸記者)

 グラハンとは、航空機の到着から出発までの間に実施される地上支援作業の総称だ。駐機場での誘導、燃料給油、機内清掃や手荷物預かりなど多岐にわたる。国土交通省が把握するだけで約370社の事業者がいて、大手航空2社系列から独立系まで規模は多様だ。航空会社から直接や2次下請けで受注している。

多様なグラハン業務が空港を支えている

 以前から人手不足は懸念されていたが、コロナ禍が拍車を掛けた。航空需要の激減に伴って各社の従業員数は1―2割減少。背景には低い給与水準や不規則な労働時間もあるようだ。専用タンク車での給油は1人で作業できるまでに1年を要するなど、訓練や資格取得に時間がかかる点も機動的な人材確保を難しくしている。

 人手不足は道内も同様だ。道内7空港を運営する北海道エアポート(HAP)の担当者は「発着遅延など目に見える問題は起きておらず危険水域ではない」としつつ「どの空港も充足はしていないだろう」と指摘する。

 実際、新千歳空港では働く人が最盛期の9000人から7600人(2022年度)に減少。国際線を再開できない航空会社が出始めた。札幌都心に近い丘珠空港でも、ターミナルビル関係者は「幸い今は足りているが、必死になって何とか集めている」と厳しい状況を明かす。

 一方、行動制限や水際対策の緩和で航空需要は回復している。新千歳空港では国内線の発着便数がコロナ前と同水準にあり、国際線も既に5路線が再開。中国国際航空も7月から北京便の再開を決めた。中国本土と新千歳を結ぶ定期便は初の再開だ。道内観光が活発化する冬季に向け、冬ダイヤではさらなる再開が期待される。

 HAPもコロナ禍の間、新千歳空港の国際線駐機場でハイドラントと呼ばれる地下埋設管給油設備を設けるなど「やれることはやってきた」(担当者)状況だ。それでも、旭川空港などを含め、国際線の再開につれて人材確保が追い付かなくなる懸念は強い。

 苦境からの脱却を見据え、官民が人材確保に向けて動き出している。新千歳空港では2月25、26日、「空港お仕事フェスタ」が開かれた。学生向けセミナーや一般向け体験イベントが実施され、185人が来場した。

 主催したのはHAPやグラハン各社、国交省、道庁で構成するワーキンググループ(WG)だ。人材確保の取り組みに国の補助が付くこともあり、他の道内空港でもWGの設置が進むなど情報発信の機運は高まっている。

 HAPは3月にも、新千歳空港の各社求人を集約した採用ウェブサイトを開設。グラハンのほか、同じく人手不足といわれる保安検査や、小売り・飲食など多様な業種を紹介して人材確保に向けた動きを強めている。

 道内7空港の民営化で審査委員を務めた石井吉春北大客員教授は、グラハンの人材確保には労働条件見直しなど地道な取り組みが重要だと話す。また、航空各社が系列企業に委託する縦割り構造もあることから、「グループを超えた協業も今後の検討課題になる」と指摘。委託構造の変革を視野に入れるべきだとの見方を示している。


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