旧藤丸百貨店建て替えへ 帯広市の新たな象徴に

2023年06月03日 08時00分

 ことしの1月31日に閉店した藤丸百貨店の建て替えは、さまざまな背景を踏まえた決断だ。再建を担う新会社の藤丸(本社・帯広)は、新たに3―5階の商業ビルを構想。帯広市中心部の空洞化を防ぐ意味でも、2026年度の再開を目標に掲げた。これまで経済界は「単なる一商業施設の閉店ではない」と口をそろえてきた。それは跡地にも言える。新施設は「変革の柱」となり、起爆剤としての役割が求められる。

 現建物の耐震化構想から、大きくかじを切った。同社の村松一樹CEOは「市民の愛着がある。ただ、施設の老朽化などは無視できない」と口にし、難しい判断を迫られた。商業と住居、医療などを含めた複合施設化を模索していたが、事業費の高騰を踏まえ商業に特化させる。

 経済合理性より、早期再開を優先させた事情がある。敷地は約5000m²と限られ、複合施設を建設する場合は高層化が必要。事業費は増大し、計画期間も6―8カ年程度を要してしまう。資材価格の先行きは不透明で、空洞化の長期化だけが確実視される。藤丸の屋号を残すためには、記憶の風化を避けたいところ。長期化すればするほど「藤丸の消滅」につながりかねないのだ。

 「市内マンション需要には頭打ち感がある」と漏らす経済関係者もいて、複合化の潜在的なリスクは拭いきれなかった。その点、商業に絞ったことで施設はコンパクトになり、ターゲットも明確化。結果的に経済合理性をも得る可能性がある。

 建て替えに対して否定的な声は聞こえてこない。22年7月の報道直後こそ建物への愛着を募らせる声もあったが、閉店後は周辺環境や今後の課題の対応に移行。現実を見据えた取り組みに理解を示し、閉店から約4カ月での再開目標の公表は好印象だろう。

 帯広市の協力は不可欠だが、米沢則寿市長は静観姿勢を貫いてきた。しかし、ある経済関係者は「近隣の音更町に商業施設が相次いで進出している。逃した魚は大きい」と批判。危機感不足の印象は否めない。藤丸は企業版ふるさと納税の適用などを要請する考えで、米沢市長を中心とする幹部クラスの積極性が命運を握る。

 帯広市中心部は、すっかり寂れてしまった。藤丸の再建が起爆剤になるのは紛れもない事実で、周囲を巻き込んだ再開発の追い風になり得る。122年の歩みを終えた藤丸。生まれ変わり帯広の新たな象徴となることが望まれる。(草野健太郎記者)

Webメディア「DoKoDe 北の羅針盤ジャーナル」では、藤丸百貨店建て替えについてのWEB独自記事を掲載しています。

【帯広】藤丸百貨店建て替えへ/3―5階の商業施設で再建

 このほかの藤丸百貨店建て替えに関連する過去の記事は「e-kensinプラス」、「DoKoDe 北の羅針盤ジャーナル」で読むことができます。

DoKoDe 北の羅針盤ジャーナルへのリンクバナー e-kensinプラスへのリンクバナー

関連キーワード: 十勝 商業施設 時評

ヘッドライン

ヘッドライン一覧 全て読むRSS

三菱電機のビル・施設向けソリューションはこちら
  • 川崎建設
  • web企画
  • 東宏

お知らせ

閲覧数ランキング(直近1ヶ月)

おとなの養生訓 第245回 「乳糖不耐症」 原因を...
2023年01月11日 (1,490)
藻岩高敷地に新設校 27年春開校へ
2022年02月21日 (1,447)
おとなの養生訓 第43回「食事と入浴」 「風呂」が...
2014年04月11日 (1,392)
交通体系整備を考える会、札幌外周高速道を構想
2023年06月20日 (1,274)
ヒトデ由来成分でカラス対策 建設業界に鳥類忌避塗料...
2019年06月28日 (1,219)

連載・特集

英語ページスタート

construct-hokkaido

連載 おとなの養生訓

おとなの養生訓
第258回「体温上昇と発熱」。病気による発熱と熱中症のうつ熱の見分けは困難。医師の判断を仰ぎましょう。

連載 本間純子
いつもの暮らし便

本間純子 いつもの暮らし便
第34回「1日2470個のご飯粒」。食品ロスについて考えてみましょう。

連載 行政書士
池田玲菜の見た世界

行政書士池田玲菜の見た世界
第32回「読解力と認知特性」。特性に合った方法で伝えれば、コミュニケーション環境が飛躍的に向上するかもしれません。