本道の労務単価依然低く-技術者の流出に懸念高まる

2015年02月27日 19時17分

 2月から適用が始まった新たな北海道の公共工事設計労務単価が、47都道府県別の金額順で過去最高の36位となった。しかし、46職種のうち全国平均を上回ったのは、タイル工や潜函工など7職種しかない。2020年の東京五輪開催準備や東日本大震災の復旧が進む東京や東北3県など、より好待遇の単価を求めて技能労働者が流出する懸念が高まっている。本道は相変わらず、道外への人材の供給源となっている現状をうかがわせる。

 ◇敬遠される本道

 国土交通省などが1月末に発表した15年度公共工事設計労務単価(単純平均)のうち、本道の単価は前年度を4%上回る1万9878円に上昇した。過去最低を記録した10年度の1万4956円から回復し、2000年度以前の水準に戻りつつある。

 安倍政権の経済政策で、デフレ脱却や技能者の社会保険加入など処遇改善を図るため、13年度から労務単価が大幅に引き上げられている。新たな本道の単価は12年度に比べて31.4%、4753円増額となった。

 しかし、全国平均は2万1174円で、本道単価と比べて6.5%、1296円高く、格差が顕在化している。全国平均も12年度からの引き上げ額が4684円に上り、本道の増額分とほぼ同じだからだ。

 本道は、初めて公共工事設計労務単価が採用された1996年度の2万450円から始まった。全国47都道府県で最も低く、全国平均との差は2585円もあった。

 97年度に2万1792円となり、その差がやや縮まったものの、全国最下位の座は変わらず。99年度に37位に浮上した後、2000年度は15.1%下落した。以降は2万円台を下回り、12年度まで13年間、最下位の47位を独走した。

 低迷する間、中部や関西、関東の単価が高い上位都府県には、道内の技能者が冬季の出稼ぎに向かう流れが定着した。比較的身軽な個人事業主や一人親方の技能者の多くは移住したとみられる。

 新たな労務単価で最高額となったのは東京の2万4011円。景気の一極集中を象徴するように08年度から1位を継続している。前年度に比べて2.7%の上昇と小幅だったが、12年度比では30.4%、5591円増えている。

 東北は宮城が2万3070円で8位。次いで福島が2万2113円で14位、岩手が2万1774円で16位の順。12年度と比べて宮城が41.8%、6795円、福島が41.3%、6461円、岩手が40.5%、6274円いずれも上昇している。

 東京では、五輪開催に向けて社会基盤整備や競技場新設、再開発が今後本格化し、東北では自治体の復興工事や高台移転がこれから始まる。北海道開発予算は堅調に増加するものの、補正予算の縮小が続く中、人材の流出が懸念される。半面、工事の混雑が常態化するが、道外に応援を求めても本道の単価が敬遠される事態が想像できる。

 ◇工種で分かれる明暗

 道内で全国平均を上回ったのは、2万400円のタイル工(全国1位)をはじめ、2万7400円の潜函工(6位)、3万2400円の潜函世話役(7位)、2万8700円のトンネル世話役(13位)、2万9500円の橋梁世話役(14位)、2万1400円のトンネル作業員(16位)、1万9900円の保温工(22位)の7職種にとどまっている。

 逆に1万7000円のガラス工が全国で最下位。特殊作業員と普通船員が40位、特殊運転手と土木一般世話役、軌道工が42位、普通作業員が43位、とび工と型枠工が44位、一般運転手が45位、高級船員が46位と低迷している。

 とび工は前年度比6.4%増の1万8200円で、過去最高の1万9700円(97年度)に迫ったが、東京に比べて6400円少ない。34位の鉄筋工は1万8600円で6.9%増えたものの、宮城と7300円、東京と6200円の差。型枠工は6.5%増の1万7900円だが、宮城と1万100円の開きがある。

 特殊作業員と軽作業員、特殊運転手はいずれも前年度比1.8%増と伸び悩んでいる。このほか、電工は25位、防水工27位、内装工33位、塗装工36位となっている。


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