合同研修で若手定着へ-札幌など3建協が人材教育の場を提供

2015年04月03日 19時20分

 建設会社に就職した高卒者の5割が3年以内に離職している中、北海道建設業協会(岩田圭剛会長)の地方組織である札幌、旭川、稚内の各建協が、会員企業の新入社員を含む若手社員を対象に人材の定着対策に取り組む。各社から参加者が集う合同の研修会などを通じ、建設業の魅力ややりがいを伝えるとともに、同世代で悩みを共有して励まし合う場を設ける。人材教育はこれまで各社の企業風土や文化に委ねられてきたが、時代の変遷により、地域の建設業界に役割が引き継がれようとしている。

 厚生労働省が2011年3月に卒業した全国の高校生を追跡調査した結果、建設業に就職した高卒者の48.5%が3年目までに離職している。1年目は27.5%を占めた。全産業でも3年目までは39.6%と高いが、建設業が特に深刻な状況をうかがわせる。

 新入社員や中堅社員の人材教育を進めてきた札幌建設業協会は15年度から、入社して間もない20代の若手技術者を対象に合同研修を試みる。専門家によるアドバイスを絡め、同世代が悩みを共有することで、わだかまりの解消と将来への前向きな歩みを後押しする。建設現場での勤務が終わる冬季の実施を予定している。

 札幌建協によると、14年4月に開いた新入社員合同研修には26社から126人が参加したが、15年3月までに12.7%に当たる16人が退職した。ここ数年は年1割程度の離職率で推移している。事務局は「ものづくりの世界が好きで飛び込みながら、楽しさを見いだせないまま辞めている。中途離職者の防止が新規入職率を高めることにもなる」と研修の趣旨を説明する。

 大卒者の離職率は3年目までに29.2%と、全産業の32.4%に比べて低い傾向にある。しかし、道内地場ゼネコンの担当者は「公務員を志しながら、第2志望で入社した社員が自治体の試験に合格して辞めていく。転勤のない札幌市や道内主要市に転職している」と肩を落とす。

 人材不足は自治体も同じ。受験資格から年齢制限を撤廃する自治体が増えている。別の地場ゼネコン担当者は「入社5、6年以上と、現場で中堅的な立場の技術者に辞められるのが痛手」と話す。給料の少なさによる将来への不安や、忙しくて遊ぶ時間がないなどが転職の主な理由だ。

 旭川建設業協会は2、3の両日、新人社員合同研修を初めて開催。入社1―2年目の土木、建築技術者(高卒、大卒)52人と中途採用の2人が参加した。

 事務局によると、ことしは新入社員が多く、各社の負担を軽減するために企画したことに加え、「入社してすぐに辞めてしまう若者が多い。横のつながりや同期の仲間意識を醸成してもらうことも狙いの一つ。旭川工高生が多く、同期会のような雰囲気もある」と利点を説明する。会場には会員各社の人事担当者が訪れ、自社の教育プログラムに役立てようと見学していた。

 稚内建設協会は、入社1―2年目の技術者を対象に合同研修をする。13人の参加を見込み、6月中旬から1カ月にわたり、現場での施工計画作りや完成写真の撮り方など土木の基礎を習得させる。

 参加予定者は宗谷管内の高校普通科を卒業した社員だ。「知識がほとんどない中でのスタート。各社が専門学校に送り出すには負担が重く、協会が研修を主催することにした」(事務局)という。

 管内の高校には土木、建築の職業科がなく、稚内高等技術専門学院は07年に分校となり、普通課程が廃止された。こうした地方の厳しい実情が背景にある中で、先進的な取り組みとなる。

 札幌大谷大の平岡祥孝教授は、現代の高卒者ら若者の気質について「社会への耐性が弱くナイーブ。強くしようと無理をするとへこたれてしまう」と分析。立派な企業人とするにはトップの本気度が求められるとし、「相談しやすく働きやすい職場づくりが必要。仕事の意義を徹底して納得させた上で少しずつ自信を付けさせ、成功体験を積み重ねてやる丁寧さが求められる」と助言している。


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