海外資本による道内森林取得が広がりをみせている。道が2014年に確認したのは、面積が前年より172ha多い1546haで、市町村数は4つ多い19を数えた。うち約600haを中国(香港)の法人・個人が購入した。1ha以上の利用目的として、外国人観光客増加に伴う不動産開発などが挙がっているが、大半は土地の動きがないことから、資産保有の見方を強めている。
海外資本の森林取得は、11年の東日本大震災の影響で一時下火となったが、その後は回復傾向にある。大規模な森林取得が進み、12年には水源地周辺の民有地が行政の関与がないまま売買されるケースも出始めたことから、道は土地取引の情報を把握して管理を強化するため、水資源保全条例を施行するなどした。
当初は「水資源が目的だ」との声も聞かれたが、水源区域外で森林取得が現在も進んでいることから、道水産林務部の担当者は「目的はそれだけではないのでは」とみる。
道がまとめた森林取得状況を見ると、管内別では、後志が74カ所で1012haと全体の6割を占めた。これに空知の1カ所、292ha、胆振の5カ所、223haと続く。このうち、倶知安町がニセコグラン・ヒラフスキー場の周辺など39カ所で458haと最も多い。
14年は中国(香港)、カナダ、シンガポール、英領バージン諸島に所在する法人・個人が後志、胆振管内の2市3町1村で計172haを購入した。多国籍企業が多くを占める英領バージン諸島の法人が壮瞥町内の2カ所で計89ha、伊達市で46haを取得している。
森林買収後は現状維持が大半だが、道の担当者によると、最近は1ha以上の伐採を申請する法人が出始めたという。
151haの取得があったニセコ町は資産保有がほとんどで、町建設課は「1ha以上の開発行為はここ10年、聞いたことがない」と話す。13年に中国(香港)の法人が163ha購入した共和町でも、利用目的は不動産開発としながら目立った動きはなく、「どのような目的で購入したのか検討がつかない」と担当者は首をかしげる。
一方、海外資本によるコンドミニアムなどの建設が活発に進む倶知安町では、大規模な開発はないとしながらも、一部で森林を伴う土地に宿泊施設が建つなど土地利用の動きがある。
背景には外国人観光客増加に伴う、外資系宿泊施設の建設増がある。町総合政策課の担当者は「ある程度目的を持って購入している企業が多いのでは」として、動向を注視している。