コンクリート骨材にホタテ貝殻-道南で漁礁整備などへの利用広がる

2015年06月15日 19時13分

 ホタテ貝殻を骨材とする「マッシェルコンクリート」の利用が道南地域を中心に広がりを見せている。渡島総合局と桧山振興局は2014年度から、水産課が発注する全てのコンクリート魚礁整備で取り入れ、特記仕様書に明記。胆振・後志両総合局は本格導入に向け、15年度に計6漁場で試験採用を始めた。さらに北海道開発局は防波堤工事で試験的に利用を検討するなど、魚礁以外のコンクリート構造物にも適用が拡大しつつある。

 マッシェルコンクリートは、環境保全に加え、価格が上昇傾向にある天然砂や砂利の使用量を減らすことを目的に、太平洋マテリアル(本社・東京)とカイト(同・上ノ国)が共同で開発。コンクリート用混和剤のマッシェルを添加することで、産業廃棄物となるホタテの貝殻をコンクリート骨材の一部に代用できるようにした。

 強度や耐久性は一般的なコンクリートと同等レベルで、外観の見分けは付かない。価格は、森町や北海道水産土木協会、道南地区生コンクリート協組連合会らで構成するマッシェルコンクリート利用促進協議会が、生コン1m³当たり貝殻100㌔に使用量を調整するなど技術開発を進め、一般的なコンクリートとほぼ同価格に設定した。

 材料となる貝殻は、ホタテの養殖が盛んな森町尾白内町にある町の水産系副産物再資源化施設が供給する。ホタテ貝殻をコンクリートに入れるため、10㍉以下に破砕する機能を持つ施設は道内で一つしかなく、破砕と天日干しを3年繰り返し、マッシェルコンクリート用の材料を年5000㌧生産している。

 当初は堆肥目的だったが、コンクリート材料としての活用が始まったことで、山に野積みされた貝殻のリサイクル循環に大きく貢献している。

 道は、桧山管内での魚礁整備を中心に06年度から2つの漁場で試験採用を開始。貝殻1130㌧、マッシェルコンクリート約2800m³を使用した。その後、同協議会は貝殻の量を減らしてコストを調整するなど安定供給に向けた取り組みを進めたり、性能確認を重ねた。08年度からは渡島の漁場整備にも使用範囲を広げた。

 本格採用が決まった14年度は、22漁場で貝殻1840㌧、マッシェルコンクリート約1万8400m³を使用した。

 15年度は26漁場で貝殻1900㌧、マッシェルコンクリート1万9000m³を計画。渡島13漁場、桧山7漁場に加え、後志の余別沖合漁場など4漁場、胆振の虎杖浜沖漁場など2漁場で試験採用することにした。

 海中に沈めるコンクリート魚礁以外に、漁港整備の防波堤で使用を検討する動きもでてきた。開発局は、近く函館開建が発注する予定の砂原漁港ほか1港東防波堤ほかの一部で、試験的に採用する。

 函館港湾事務所の担当者は「道による漁場整備への使用で品質には問題ないと考えているが、波浪の影響などを受けやすい防波堤のため、目視点検やデータ収集・分析を進める」と述べ、試験結果を分析して有益性などを検討した上で、普及の是非を見極める。

 マッシェルコンクリートの利用は、貝殻から材料を生産する施設が森町にしかなく、生コン工場への輸送費の関係などから、道南とその周辺に範囲が限られる。道内には、ホタテを産地とする自治体が多数あることから、同協議会の関係者は「(マッシェルコンクリートを)利用したいとする声があれば、供給体制などで協力したい」と話している。


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