旭川市内中心部で、古くなった建物の解体現場が目に付く。いまだ個人消費に明るさが見えない中、経営不振や後継者問題で事業から撤退する人が後を絶たない一方、より条件の良い立地を求める事業者が出ているためだ。市の「空き家等の適正管理に関する条例」が2014年10月に施行されるなど、所有する建物を放置することに対し、世間の風当たりが強くなっていることも背景にある。高齢化や人口減少を理由に、市内での解体需要は今後も続くものとみられている。
イオンモール旭川駅前店の開業を契機に、相乗効果が期待される市内中心部。一方で後継者不在や経営不振を理由に商売を辞め、店舗を売りに出したり、建物を取り壊す事業者は後を絶たない。
実際、市内の解体件数は12年度から増えている。80m²以上の建築物の解体で前提となる、建設リサイクル法の届け出件数は、14年度で716件に上った。消費税増税の影響もあって前年度から3%減ったが、いまだ700件台を維持している。
市は昨年10月、「旭川市空き家等の適正管理に関する条例」を施行。老朽化した建物の倒壊や部材の飛散、屋根からの落雪事故などを防ぐため、所有者に建築物の適正管理を求めている。
15年2月には、自治体の空き家対策を後押しする、国の「空家等対策の推進に関する特別措置法」も施行された。空き家や空き店舗に対する、世間の目はより厳しくなっている。
「管理が手に負えなくなり、更地にして売却を求める人も出てきた」と市内の不動産関係者。木造を得意とする解体業者は「昨年同様、6―8月は中心部の仕事に恵まれている」と手応えを実感する。
一方、将来をにらみ市内中心部に土地を求める動きも出ている。さらに、17年4月の消費税10%が近づくと、売買の動きは一層高まるとみる事業者もいる。
加齢による家族構成の変化や高齢化を理由に、今後も住まいや店舗を手放す動きは続くとみられる。土地や建物の新陳代謝が進む中、市内の解体需要は引き続き堅調に推移しそうだ。