平取町が二風谷地区のアイヌ文化施設周辺4haを再整備へ

2015年08月28日 19時19分

 平取町は2016年度から2カ年で、二風谷地区のアイヌ文化施設周辺4haを再整備する。駐車場の移設や道路の歩行者優先化のほか、広場などの休憩スペースを設ける計画で、工事費は現段階で4億―5億円を想定。15年度は実施設計と測量調査を進める。

 沙流川流域にある二風谷地区は、アイヌの人々が人口の3分の1を占め、アイヌ文化が色濃く残る道内でも代表的な地域。伝統的な家屋であるチセなどが展示されている町立二風谷アイヌ文化博物館や、民間の萱野茂二風谷アイヌ資料館、伝統民芸品を制作する共同作業所などが集まっている。

 アイヌ文化の振興を重要施策の一つに掲げる同町は、イオル(アイヌの伝統的生活空間)再生事業や、博物館運営・文化団体の活動支援などを展開。この一環として、博物館などの文化施設や周辺の道路、駐車場などの再整備を検討し、14年度に二風谷地区再整備基本計画を策定した。

 博物館と資料館は国道237号を挟んでそれぞれ奥まった位置にあり、これらを遮るように駐車場が置かれ、両館の一連性が失われていることに加え、地域の景観からはアイヌ文化の雰囲気が感じられない、各施設への行き先を示すサインが分かりづらい、休憩スペースがない、といった課題が挙がっている。

 そこで観光客らがこれらの施設を訪れやすいよう、駐車場を現在地の北側に移設して歩行者の動線を確保。国道沿いの駐車場は大型バスの乗降場に変更する。

 また、博物館と資料館を結ぶ「匠の道」のうち、国道交差点から資料館側約400m区間では、歩行者空間の安全性向上を図る。具体的には現状の道路幅員13・5mを変えず、歩道を車道と同じ高さまで切り下げた上で、それぞれを異なったブロックで舗装。その際、実際の区分線より車道側に歩道と同じブロック舗装をはみ出させる。ドライバーに車道が狭い、歩行者が近いと感じさせ、スピードを抑制する効果を狙うもので、島根県の観光地で実践されている。

 このほか、看板やサイン類へのアイヌの伝統的なデザイン採用や電線地中化などを通じて景観阻害要因の緩和も進め、伝統的な祭儀やイベントができる広場、建設途中のチセに見たてたあずまや、ダム湖の水辺が見渡せるカフェなど、交流や休憩ができるスペースも整備する方針だ。

 実施設計と測量調査は、このほどドーコンと税抜き1290万円で契約。再整備は当面、博物館周辺のみで実施するが、国道を軸として今後さらに範囲を広げていく見通し。

 まちづくり課の担当者は「民芸品制作の後継者育成も含めた取り組み。国営のアイヌ博物館開設が決まった白老町とも連携を図りながら、再整備を進めていきたい」と話している。


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