公共事業、秋枯れの様相-補正待望論日増しに強く

2015年09月07日 19時12分

 公共事業量が大きく後退したことで、「秋枯れ」の様相を色濃くしている。地域と企業間による受注格差が著しく、道内の建設工事関係者からは補正予算の待望論が日増しに強まっている。工事量の復活を背景に推進してきた技術者・技能者の人材不足対策にも水を差しかねない現状にある。

 北海道建設業信用保証によると、2015年4―8月の公共工事請負額(保証工事)は5534億円で前年度同期を16.4%、1085億円下回った。減額幅は8月の請負額661億円を大きく上回り、安倍政権以前の水準に戻った。

 要因は、14年度補正予算(繰り越し)の規模が前年度補正の6分の1にとどまり、2年連続で編成してきた15カ月予算が小規模なものにとどまったからだ。建設関係者が懸念してきた発注額の「前年度比2割減」が現実味を帯びている。

 北海道建設業協会は6月中旬、国土交通省や本道選出の国会議員らに補正予算の早期編成を要望。国は、14年度決算の歳入から歳出を差し引いた純剰余金が1兆6000億円程度と発表したものの、補正予算の早期編成を望む都道府県は少数だった。

 道建協は8月下旬にも本道の行政、経済関係者と共に自民党の北海道総合振興特別委員会に出席し、北海道開発予算の安定的で持続的な確保に向け、あらためて補正予算の措置を求めた。商工関係者は「地方創生を実現する社会資本整備が遅れている。地方が疲弊しては手遅れになる」と、地域格差の顕在化を主張した。

 北海道開発局と道の公共工事契約状況を見ると、15年度6月末の契約率は59.5%で、残事業費は1945億2500万円。前年度同期の残事業費を22.6%、566億円下回っている。

 アベノミクス効果によって道内でも企業の投資意欲が高まり、民間の建築工事が増えている。しかし、市街地再開発や分譲マンションなど札幌市内に限定され、地方都市では地域格差に加え、企業間の受注格差も浮上している。

 防災・減災を強化するための国土強靱(きょうじん)化基本法の地域強靱化計画と、適正な利潤により技術者や技能者を確保する担い手3法(公共工事品質確保促進法、入札契約適正化法、建設業法)が水平展開されているものの、公共事業量の減少により建設業者は戸惑いを隠せないでいる。

 人材確保には高賃金、好待遇、好環境が理想だ。好循環を生み出す源泉として受注量の安定確保が欠かせない。専門工事業者と技能者が社会保険に加入するため、公共工事設計労務単価が段階的に引き上げられているが、工事量が少なければそれも限界があり、受注競争激化のしわ寄せにより水泡に帰す可能性をはらんでいる。

 20年の東京五輪に向けて準備を進める都内では、新国立競技場の白紙撤回で関連施設建設が凍結し、一時は専門工事業者が干上がったが、新しい計画の決定とともに工事が本格化する。

 道内の工事量がこのまま低迷を続けると、東北での震災復興を含めて本州への人材流出が相次ぎ、建設業界が総意で取り組むイメージアップ戦略や魅力ある職場づくりに対する支障が懸念される。

 道建協の岩田圭剛会長は、道総合振興特別委で「地方業者からは『この先の仕事がない』と大きな悲鳴が上がっている」と述べ、補正予算の早期編成に理解を求めた。


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