道建協会員の倒産、上半期は2件ー最少ペースも公共投資減で暗雲

2015年10月02日 19時12分

 北海道建設業協会は、2015年上半期(1―6月)の会員企業倒産件数をまとめた。全道で2件にとどまり、このままだと09年以降最少だった14年の3件を下回るが、公共事業量の減少で下半期(7―12月)は、暗雲が立ち込めている。道内建設市場は回復傾向にあるものの、地域間や企業間で受注量の格差が生じていることから、地域経済の再生や企業経営の安定化には積極的な公共投資政策が求められる。若い人材の確保や処遇改善を軌道に乗せるためにも、補正予算の早期編成を望む意見が相次いでいる。

 15年上半期の倒産は、第1四半期(1―3月)と第2四半期(4―6月)が各1件。前年同期を1件上回るものの、低水準でのペースが定着し、市場の回復を印象付ける。

 近年は、リーマンショックの影響を引きずり民主党に政権交代した09年が11件、公共事業の削減が本格化した10年が9件で、北海道開発予算が過去最少となった11年が13件で最も多い。震災復興予算が付いた12年は6件と半減し、13年に安倍政権が公共投資政策を始めると3件に急減。14年も同数だった。

 アベノミクスは民間設備投資を誘発し、市街地再開発や分譲マンション新築、オフィスビル改築などの需要を増やしたが、効果は札幌圏を中心に限定的だ。地方都市からは「アベノミクスの効果が届いていない」と不満の声が出ている。

 受注量に格差が生じ、利益率が伸び悩むなどで厳しい経営を強いられている建設会社も少なくない。地域のインフラ整備や老朽化対策、災害復旧に対応できる数は最低限を維持しているが、経営内容はそれぞれ異なるのが実情だ。

 全国建設業協会によると、47都道府県建協会員の15年上半期倒産は38件にとどまり、前年同期を24%、12件下回っている。過去6年では09年の316件をピークに減少をたどり、14年は82件で最少となった。

 全建は「アベノミクスが奏功したが、公共投資が減り、倒産は下げ止まってきた。対策が不十分なら下半期には厳しさが出てきそうだ」と懸念する。10月から始める全国9ブロックの会議では「安定的で継続的な予算確保」と「補正予算の早期編成」をテーマに掲げ、地方建協や国土交通省と議論する。

 道建協の会員企業は、大卒や高卒などの若い人材を確保するため、イメージアップ戦略の展開や給与上昇、休暇取得など処遇改善に努めている。しかし、倒産が増加に転じることになれば「人材問題は頓挫し、東京五輪の準備が本格化する首都圏や震災復興が進む東北に人材が流出する。地方創生や国土強靱(きょうじん)化にも支障が出るだろう」(業界関係者)と話す。

 帝国データバンク札幌支店のまとめによると、15年上半期の道内建設業倒産は28件。前年同期に比べて2件減少したが、サービス業と並んで最も多い。同支店は「公共工事減少の影響や円安、原材料高が引き続き懸念材料で、中小・零細企業を中心に倒産が増加に転じる可能性が払しょくできない」としている。

 道建協は自治体や経済団体と連携し、適正な公共予算の措置を求め、中央省庁や本道選出の国会議員らに積極的に要請する考えだ。


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