旭川市が本州企業の誘致に力-4期工業団地造成も計画

2015年10月13日 08時07分

 旭川市が本州企業の誘致に力を入れている。静岡県に本社を置く食品加工会社を皮切りに、2012年以降で7社の誘致を実現。近年は分譲地に余裕がなくなってきたことから、第4期の工業団地造成も計画している。自然災害の少ない立地条件を前面に打ち出し、リスク分散や事業継続計画(BCP)の側面から、今後も呼び込みを一層強化していく。

 市の主な企業誘致は、総菜メーカーのヤマザキ(本社・静岡県吉田町)が始まり。市内中心部にコールセンターを800席増設したベルシステム24(同・東京、01年に旭川へ事務所開設)を含めると、総数は8社に上る。

 背景には、11年の東日本大震災がある。震災以降、工場の機能分散や企業によるBCPへの意識が高まり、首都圏や大阪、名古屋から地方へ拠点を移す企業が増えた。そんな中、内陸で自然災害の少ない旭川にも、本州企業が移ってきた。

 活況な誘致に比例して、受け皿となる用地も手狭になってきた。緑が丘に構える旭川リサーチパーク17haは13年に完売。東旭川町の工業団地97haは、製造業など約100社が集積。最近では住宅資材総合商社のキムラ(同・札幌)がリース事業部旭川営業所を7月に開設し、こちらもおおむね完売となっている。

 そのため、市では工業団地の第4期造成を計画。開発予定面積は21・5haで、造成費は約9億円を試算。17年度の着工、18年度の分譲開始を目標にしている。

 総事業費は21億円をみているが、分譲開始から完売まで10年を想定した試算のため、販売期間が短くなれば管理経費などが少なくなり、事業費は圧縮される見込み。

 名称は、仮称・動物園通り産業団地。従来の製造・流通拠点に加え、本社機能移転や企業の試験・研究施設としての利用も考え、工業ではなく〝産業〟団地として裾野を広げる意向だ。

 開発には、農地転用に伴う道との協議が絡んでくる。何より、事業の進展には複数にわたる地権者との用地買収や移転補償の話し合いが鍵を握る。だが、もともと第3期造成(1995年に分譲開始)で開発計画の一部だった背景もあることから、地元の理解は得やすいとみられている。

 経済界の期待も大きい。旭川商工会議所は、市の16年度施策について「動物園通り産業団地の早期造成と環境整備」を新規案件で要望。新谷龍一郎会頭の申し出に対し、西川将人市長は「一日も早く整備できるよう、作業を進めている」と答えていた。

 市の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」案では、人口減少を食い止める施策の一つとして企業誘致を掲げる。15年度からの5年間で29件の立地が目標で、女性登用や6次産業による付加価値などをキーワードに、時流に合った地域づくりを目指す。

 14年に開設した東京オフィスも少しずつ実績を上げている。出張で対応していた時代に比べ、企業への訪問回数は飛躍的に増えた。それでも「ヒット率で言えば何厘の世界」(企業立地課)。種をまかねば実は結ばない―という信念で、地域活性化を後押ししていく。


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