2016年の道内鉄骨加工業は、札幌市都心の再開発・創世1・1・1区、北海道電力の火力発電所、帯広の厚生病院など鋼材量で5000㌧規模を超える案件が複数動きだし、上半期を中心に高い稼働が続く見通しだ。鋼材関係者の多くは「見えているプロジェクトをこなすだけで、道内のファブリケーターは大手を中心にかなり忙しい状況になる」と予測する。
15年は公共工事量が減少し、民間プロジェクトも大型案件が少ない端境に入った。日本鉄鋼連盟がまとめている普通鋼材の地域別受注高によると、道内の15年度の鋼材受注高は52万4000㌧で、前年度同期を14.3%下回る。
ただ道内の鉄骨加工業者は札幌市を中心に13年から続く一定規模の再開発案件や建築プロジェクトがあるため、その調整で前半はフル稼働が続いた。首都圏の再開発案件などが採算の合う形で道内に流れてきているため、大手を中心にこれらの受注比率を高めたことも高稼働に拍車を掛けている。
秋口以降は積雪期を迎える季節的要因もあり稼働は落ち着きを取り戻したが、鉄鋼関係者は「1月にかけ稼働は底を迎えるが、来年は大型案件が見えていて高稼働が予想され焦りはない」(鉄鋼メーカー関係者)と話す。
大型物件の鉄骨計算を担う札幌共同積算事務所によると、15年1―11月の積算量累計は10万5000㌧で前年度を22%下回る。ただ「16年は5000㌧から3万㌧弱の大型物件が見えていて、後半にかけて積算数量も回復傾向」と説明する。
15年後半からは、TPP対策関連で道東を中心に牛舎など農業整備の需要が表面化。首都圏の再開発も東京五輪に向け本格稼働し道内への加工依頼が増加する見通しで「ファブは来年も高稼働が続く」と予測する。ゼネコン側には高稼働を見込み、予約など囲い込む動きも目立ち、加工費は適正水準へ改善傾向という。
懸念材料は回復に停滞感のある道内経済。「公共工事の減少幅が大きく道内経済への影響は大きい。中小企業の設備投資が停滞傾向にあるのも気掛かりだ」と関係者。2000m²級の中小規模案件も見えておらず大手、中小ファブで「高稼働が二極化する可能性もある」とみる声もある。