この冬、帯広開建が発注した十勝川改修の7現場に、ICT建機を活用した土砂掘削の共同基地局が設置された。通信衛星から位置情報を受信する基地局は、現場ごとに設けられる場合が多く、7現場での共同基地局の設置は珍しい。
各現場とも十勝川の断面積を広げる河道掘削の工事。掘削土は現場内で土質ごとに分け、幕別、豊頃、池田の各町に運搬し、築堤盛り土や農地の土壌改良などに活用される。全工区で58万m³の土砂を掘削して10㌧ダンプで運搬するため、各現場ともICT建機を導入した。重機オペレーターが高齢化し、高精度の施工技術や効率の良い現場管理が求められる中、ICT建機の活用は管内で急速に進みつつある。
ICT建機を正確に測位するには補正観測データの受信が必要となる。現場ごとに基地局を設けたり、補正データ配信会社を利用する方法があるが、7現場は全て池田町、豊頃町内で工期が同じ。今回の工事で組織した土砂運搬協議会で検討し、コマツレンタル道東(本社・帯広)が協力して共同基地局を設置することにした。
現場は半径3㌔圏内で、平地なため上空を妨げる障害物はない。今回の工事では各現場の中心に位置する川田工業の現場事務所に高さ17mの無線送信アンテナを設置して基地局を用意した。
現場代理人の石田弘樹さんは、「以前、隣接する他社の現場との2社で共同基地局を設けたことがあった。今回の現場では、基地局を1カ所にすることで、各社とも設置コストや管理業務の手間が省ける」と強調。また、「測量作業がなくなるため、空いた時間で安全管理に集中できる。残業も減らせる」と導入効果を説明する。設置コストは各社で分担した。
川田工業では入社1、2年目の技術者が出来形管理を担当。「こうした作業は年配よりも若手のほうが得意」と石田さんは話す。
また、公共電波を利用する無線機の周波数には限りがあり、狭いエリアで複数の無線を使うと混信しやすい。共同周波数を使うことで無線を使う営農者との混信を防ぐメリットもある。
コマツレンタル道東ICT技術開発室の鈴木彰室長は「補正データ情報を共有することで、コスト削減やICT建機の普及促進につながる。費用対効果が高い情報化施工の取り組みとして、国がi―ConstructionでICT建機の導入拡大を目指す中、さまざまな応用の可能性が見えてきた」と今後の展開に期待する。
共同基地局を設置した十勝川改修は次の各現場。
▽利別川川合南10線河道掘削、統内南15線河道掘削、統内下流河道掘削ほか=宮坂建設工業▽利別川合下流河道掘削=川田工業▽統内南16線河道掘削=中山組・新妻組共同体▽新川上流河道掘削=村上土建開発工業▽利別川川合上流河道掘削=北土開発