北海道新幹線の開業から1カ月が経過した。利用者数は在来線に比べて倍増。観光スポットなどはにぎわい、開業効果が見えつつある。サクラが見頃を迎え、本道にも本格的な観光シーズンが到来し、さらなる交流人口の拡大が予想される中、新函館北斗駅前の商業用地への関心も、開業前に比べて高まっている。(写真は停車中の新幹線車両を見学する市民ら)
JR北海道によると、新青森―新函館北斗間の1カ月の利用者は17万3600人で、1日当たりの平均は5600人。乗車率は27%にとどまるものの、在来線時代の前年実績比2倍と順調に推移している。
新函館北斗駅は、1カ月がたった今も、利用客に加え、物珍しさもあって地域住民らが集まる。1階に入るアンテナショップも盛況で、「想定の2倍以上の売り上げ」(スタッフ)という状況。駅の観光スポット化は当面続きそうだ。
駅隣接の市営駐車場を当面無料としたことで、新幹線の利用以外で同駅を訪れるケースは少なくない。ここを拠点に在来線特急、または都市間バスに乗車し、札幌へ向かう姿も多く見られるようになり、思わぬ集客になっている。
こうしたにぎわいの一端で、駅前商業用地5・3haへの企業誘致にも動きが出てきた。担当する北斗市水産商工労働課によれば「開業前より問い合わせは増え、視察する企業も出ている」そうで、具体化には至っていないものの「前進している」と手応えを感じている様子。
観光都市の函館市内に目を向けると、函館山ロープウェイや五稜郭タワーの利用者は前年比1―3割増、宿泊施設の予約も夏まで好調だ。函館ホテル旅館協同組合の遠藤浩司理事長は「大型連休は例年、道内客が8割、道外客が2割だったが、道外6割、道内4割ほど」と新幹線効果が見受けられる。
一方で、課題も見えてきた。在来線への乗り継ぎの不便さだ。函館市の工藤寿樹市長は25日の定例会見で、オフシーズンの平日の利用率とともに課題に挙げ、ICカード導入の必要性を強調。「JRに検討を要請したい」と話した。
函館商工会議所の永沢大樹さんは「乗り継ぎのストレスをなくすことが必要。新幹線開業で函館駅から青森駅への平均時間が11分遅くなった」と指摘。両地域の経済交流を活発化する上でも、待ち時間短縮などダイヤの微調整を求めている。
開業効果をより実感できるようになるのは大型連休から。6、7月の団体予約は、例年以上のペースで推移しているという。
雪や風に強く、定時性の高さが魅力である新幹線は、通年観光を促進する有効な移動ツールとして期待を集めている。