三笠市の若者移住定住促進住宅建設費用助成の活用が好調だ。2011年度から始まった制度だが、申込件数がゼロの年度もあり、15年度までの累計は5棟33戸にとどまっていた。しかし、16年度は既に7棟46戸の申し込みがあるなど、件数が急増。賃貸共同住宅に空き室がないことに加え、助成に必要な戸数を1棟6戸から4戸に見直すといった条件緩和が背景にあるようで、転入者の増加だけではなく、市内業者が施工する案件が多くなり、地域経済の好循環につながっている。
この制度は、建設費用の10分の1以内を助成するもので、上限は1棟当たり600万円。毎年1棟分を当初予算に措置しており、13、15、16年度は予算枠を超える申し込みがあったため補正を組んで対応。累計で7000万円を投入している。
これまでの建設戸数を見ると、11年度は1棟8戸、12年度はゼロ、13年度は2棟13戸、14年度はゼロ、15年度は2棟12戸、16年度は7棟46戸。このうち市内業者が7棟を施工した。16年度分は施工中だが、完成した賃貸共同住宅は全て市内外の入居者で埋まっているという。
また、建設地は市役所や市立三笠総合病院が並ぶ中心市街地と国道12号やイオン三笠店がある岡山地区が多く、市では「子育てや買い物に便利な土地を選択している」と分析する。
経済建設部建設課住宅係の宇治憲一郎主任技師は、16年度が大幅に伸びている背景に、市内の賃貸共同住宅に空き部屋がなかったことや助成内容見直しを挙げる。
事業開始前に市内にあった賃貸共同住宅は18棟134戸。一番古いもので1996年度の建設だが、20―30代の子育て世代や1人暮らしの若者などで埋まっていた。
助成内容見直しでは、16年度から戸数を1棟6戸から4戸にしたほか、2DKを間取りの半分に含めることを撤廃。1区画の土地でも建てやすくし、間取りも施主の判断で考えられるよう条件を緩和した。
加えて、助成を活用した物件が完成しても、すぐに埋まってしまう状態が続いていることから、建設業者や個人の施主が需要が見込めると判断したようだ。
さらに、市では移住・定住促進策として、若者移住定住促進住宅家賃助成と戸建て向けの住宅建設等費用助成を展開。家賃助成を使いアパートに住む人や、住宅建設費助成を活用して戸建て住宅を建てる人、中古住宅を購入する人など活用方法はそれぞれで、各施策を有効利用し、中心市街地や岡山地区に居住する人が増えている。
これら3つの施策は転入者増加にもつながっていて、11年度の283人から15年度は335人にまで増加。企画財政部政策推進課定住対策係の萬年剛至係長は「転入にはさまざまな理由があるが、移住・定住施策の効果が少しずつ出ているのでは」と効果を実感する。
総合戦略では、若者移住定住促進住宅建設費助成を活用した19年度までの建設戸数目標を50戸に設定した。
16年度の動向を見ると、目標を達成できる可能性は高いが、宇治主任技師は「まずは46戸が満室になってほしい」と現実的に捉えている。17年度予算で2棟分を措置する可能性も低く、需要と供給のバランスを見定めながら、1棟ずつ確実に進めていく考えだ。