春からの稼働に向け、新冠町太陽地区で延べ5000m²、総事業費5億円に上る乳牛舎建設を進めている太陽デイリーファーム(浅野正慶社長)。同町内で初めて、個人酪農家が共同で設立した株式会社で、5年後に日高管内最多の経産牛飼養頭数400頭を目指す。町は、同社が酪農の共同経営成功事例となることを期待している。
町内でそれぞれ酪農を家族経営する43歳の浅野社長と35歳の殿山順一取締役は、酪農の労働力不足や施設老朽化を懸念。効率的な作業や管理、遊休農地の活用、雇用創出など持続可能な経営基盤確立を目指し、2016年4月に同社を設立した。社名の「デイリー」には、毎日(daily)の生活と酪農(dairy)の労働・経営環境を良くするという2つの意味を込めた。
両氏所有の経産牛計230頭から事業を始めるが、21年度までの5カ年で日高管内最多の404頭に増強する計画。年間の出荷乳量3838㌧、個体乳量9500㌔、乳代3億665万6000円と、法人設立前より最大で約3倍向上させることが目標だ。また、牛の生産から手掛けてきた殿山取締役のノウハウを生かし、自家育成による頭数の増加も図る。
その舞台となる牛舎建設は、町畜産クラスター協議会の事業として約半額の国庫補助が決まり、10月に着工した。
大規模で効率的な飼養ができるフリーストール形式の牛舎には、目標の400頭を1日で搾乳できるよう、一度に16頭が搾乳可能なイタリア・TDM社製のパラレルパーラーを2台設置。牛舎からふん尿を取り除くカナダ・GEAフール社製のバーンスクレーパー、同・ノーウェルデイリー社製の通路マット、ドイツ・クライバーグ社製の牛床マットのほか、汚濁物質を分解する曝気(ばっき)槽、ふん尿を肥料化するスラリーストアも設ける。
稼働開始は4―5月を予定。浅野社長と殿山取締役、両氏の家族の計7人でスタートするが、4月には東南アジアの研修生2人、地元から従業員1人を採用する予定。将来的に13人へ増やす考えで、加工や販売など事業拡大も見据えている。
家族経営を基本とする町内の酪農は、後継者不足などで従事者が減少。半数以上が50―60歳代と高齢化も進む中、若手による法人設立は産地の基盤維持につながるとして、町は「関係団体と連携しながら成功事例にしたい」と期待を寄せる。
町には移住・定住促進の一環として、主要農産物であるピーマンなどの生産者を養成する農業支援員制度がある。同社の経営基盤が固まれば、支援員の受け入れ先とすることも検討している。